【21日の市況】ブラジル株、前日比1.59%安の13万7,881.27ポイント=利益確定売りと国外要因で反落=ドルは前日比0.46%下落して5.643レアルに

 ブラジル株式市場は21日、前日までの2日連続の史上最高値更新を受けて利益確定の動きが強まり、主要株価指数であるボベスパ指数(Ibovespa)は反落した。加えて、米国の財政悪化懸念が再燃したことも売り圧力を強めた。

 この日のボベスパ指数は前日比1.59%安の13万7,881.27ポイントで取引を終え、2,228.36ポイントの下落幅を記録した。依然として、今月8日に記録した従来の過去最高値(13万7,634.57ポイント)は上回っているものの、ここ数週間で急速に上昇していた反動が出た格好だ。

 外国為替市場では、商業ドルが前日比0.46%下落し、1ドル=5.643レアルとなった。一方、将来の金利水準を示すDI金利は前日に続き全体的に上昇し、利回り曲線全体で強含んだ。

米国の財政悪化が世界市場に影響

 今回の下落は単なる利益確定にとどまらず、米国市場の動向も大きく影響した。ニューヨーク市場では、主要3指数がそろって下落。背景には、トランプ前大統領が提案する大型減税法案が、歳出削減を伴わずに進められる可能性があり、今後米国の財政赤字が一段と拡大するとの懸念が強まったことがある。

 米財務省証券(米国債)の利回りは、ムーディーズによる米国格付け引き下げ(17日)以降も上昇を続けており、4月末からは特に顕著な上昇トレンドが続いている。

 UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル最高投資責任者は、「共和党の減税法案は今後10年で数兆ドル規模の財政赤字をもたらす可能性があり、米国債の供給増につながるだろう」と指摘した。

ゴル急騰、アズールは下落 航空業界に注目

 国内では、鉄鉱石価格が堅調だったものの、ヴァーレ(VALE3)は1.28%下落。国際原油価格の下落を背景に、国営石油大手ペトロブラス(PETR4)も1.12%安となった。大手銀行株は軒並み2%前後の下落となり、ブラジル銀行(BBAS3)のみが0.94%の小幅安にとどまった。

 一方、空運セクターでは企業動向が材料視された。米国で連邦破産法11条(チャプター11)を活用していた航空会社ゴル(GOLL4)は、再建手続きの進展を受けて35.29%急騰した。これにより、同業のアズール(AZUL4)の株価を初めて上回った。アズールは、格付け会社による信用格下げの影響で5.56%の大幅安となった。

 上昇銘柄は限られ、バイオ燃料大手のライズン(RAIZ4)が5.95%高、関連会社のコサン(CSAN3)も1.32%高と堅調だった。食肉大手JBS(JBSS3)は0.17%上昇し、鳥インフルエンザの混乱が一服する中で買い戻しが入った。

米・ブラジルともに財政に不透明感 長期金利に上昇圧力

 債券市場では、将来の金利水準を反映するDI金利が上昇。米国の財政赤字拡大懸念と、それに伴う米国債利回りの上昇が背景にある。特に1月2031年物は13.88%と、前日の13.761%から12ベーシスポイント(bp)上昇した。

 短中期の金利も軒並み上昇し、1月2026年物は14.755%(前日14.733%)、1月2027年物は14.05%(同13.967%)に達した。

 米国では、共和党が大規模な減税法案の議会通過を目指しており、独立系アナリストによれば、法案は今後10年間で3兆〜5兆ドルの財政赤字拡大につながる可能性があるという。

 EPSインベスティメントのチーフストラテジスト、ルチアーノ・ロスターニョ氏は、「格下げを受けて議会で法案審議が進む中、米国債利回りが急上昇しており、それがブラジルの利回り曲線にも波及している」と述べた。

 加えて、ブラジル国内でも財政問題が意識されている。ルーラ大統領は21日、電力料金に関する暫定措置(MP)を発表。低所得層向けに光熱費を無料または割引とする内容で、全国で最大1億人が対象となる見込みだ。政府は主な財源として、エネルギー開発勘定(CDE)からの充当を計画しているが、一部市場関係者からは財政負担への懸念も出ている。

 報道によれば、政府の試算では年間45億レアル(約1,300億円)のコストが見込まれるが、既存のエネルギー補助金制度の見直しなどで財源を確保するとしており、直接的な財政支出の増加は回避したい考えだ。

注目は世界PMI 景気の先行指標に

 22日には、主要国の製造業・サービス業における購買担当者景気指数(PMI)の速報値が発表される予定で、各国経済の5月の動向を占う上で注目されている。とりわけ、米国の追加関税措置が企業活動に与えた影響を見極める材料として、市場の関心を集めそうだ。

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