【16日の市況】メルコスール-EU協定、今が好機か=Ibovespaは前日比0.72%安の12万8316.89ポイント=ドルは0.44%下落して5.865レアルに

 ブラジル株式市場の代表指数Ibovespaは、15日(水)の取引を前日比0.72%安の12万8316.89ポイントで終え、2営業日連続の下落となった。主要銘柄のVale(ヴァーレ)の下落や、外国市場の悪化が主因。外国為替市場ではドルが再び売られ、ドル・レアル相場は0.44%下落し、1ドル=5.865レアルで取引を終えた。一方、金利先物(DIs)は方向感に欠ける展開となった。
 米中間で再燃した貿易摩擦が投資家心理を冷やしている。米国政府は、半導体大手NvidiaおよびAMDの人工知能(AI)向け半導体の一部について、中国への輸出に特別なライセンスを義務付ける方針を明らかにした。
 XPインベストメンツの株式ストラテジスト、ラファエル・フィゲレド氏は「Nvidiaは中国向けのH20チップの出荷制限によって55億ドル(約8500億円)相当の売上減を見込んでおり、同社の売上の約10%に相当する」と述べ、米国の対中政策が大手企業の業績に影を落としているとの見解を示した。
 これに対し中国商務省は、「米国の関税政策は理性的とは言えず、中国はそのような“無意味なゲーム”に乗らない」と強く反発しており、米中関係は一段と緊張を強めている。加えて、中国はロシアとの経済的な関係を強化している模様だ。

世界経済にリセッション懸念

 世界貿易機関(WTO)は、関税措置の激化が世界貿易にパンデミック以来の縮小圧力をもたらす可能性があると警鐘を鳴らした。国連も「世界経済は景気後退(リセッション)に向かっている」との見通しを示すなど、先行きへの不透明感は一段と強まっている。
 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、足元の米経済について「第1四半期は明確に減速した」と指摘した上で、「さらなるデータを見極める必要がある」と発言。インフレリスクの継続に加え、景気減速懸念も台頭しており、金融政策の見通しは不透明だ。米株式市場では主要3指数がそろって下落。とりわけハイテク中心のナスダック総合指数は4%を超える大幅安となった。

ブラジル財政に懸念再燃

 国内でも、政府が発表した2026年度基本予算法案に対して、民間アナリストらからは「現実味を欠く」との批判が上がっており、財政運営への不信感が高まった。収入増を前提とした試算には、実施時期や具体策が明示されておらず、投資家心理の悪化に拍車をかけた。

Valeが下げ主導、Petrobrasは反転

 相場の下押し要因となったのはVale株の下落だ。前日に発表された第1四半期(1-3月)の生産実績が市場予想を下回ったことを受け、株価は2.32%安となった。Petrobrasは国際原油価格の上昇に連動して上昇基調を示していたものの、取引終盤に失速し、結局前日比変わらずで引けた。
 大手銀行株も冴えず、Banco do Brasil(-0.43%)、Itaú Unibanco(-0.15%)、Bradesco(-0.16%)と軒並み反落した。一方で、Ambevは1.68%高と堅調。競合のHeinekenが発表した第1四半期の好調な業績が評価された。

JPMorgan、ブラジルへの投資妙味に注目

 米中貿易戦争の激化を背景に、JPMorganは中南米市場への投資妙味に再び注目している。同行が11日に実施したウェビナーでは、欧米投資家らの間で「ブラジルおよびチリが年内に最もパフォーマンスが期待される市場」との見方が多数を占めた。
 ドルの弱含みや、米国の景気減速懸念が背景にある。JPMorganは、S&P500の年末目標を5200に引き下げ、今後は欧州・アジア市場への資金シフトが進む可能性もあると分析。加えて、外国人による米資産の大量保有がドルの下押し圧力になるとの見方を示している。
 同行の通貨ストラテジストは、「米国の財政赤字やインフレ圧力、そしてトランプ政権の保護主義的な通商政策がドル安の背景にある」としており、その影響で新興国市場への再投資が活発化する可能性がある。

メルコスール-EU協定、今が好機とブラジル政府

 米国の保護主義的政策に対抗し、ブラジル政府は欧州連合(EU)との貿易協定(メルコスール-EU協定)の早期批准を後押しする方針を明らかにした。アペックス・ブラジルと外務省は、23日からポルトガル、ポーランド、ベルギーの各国を歴訪し、関係機関と協議を行う予定だ。
 欧州委員会は協定の法的精査を進めており、9月までに欧州議会および理事会に付議する構え。フランスやアイルランドなど反対姿勢を示していた国々も、対米関係を踏まえ「現実路線」への転換を模索する声が出始めている。
 25年以上の交渉を経て合意された同協定が発効すれば、人口7億人超を抱える世界最大級の経済圏が誕生する。ブラジルにとっては、再生可能エネルギーや環境関連投資を呼び込む絶好の機会となる。

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