27日のブラジル株式市場は反落し、主要株価指数Ibovespaは3営業日続伸と連日の最高値更新に一服感が広がった。終値は前日比0.47%安の13万8,887.81ポイントと、653.42ポイントの下落となった。
外国為替市場ではドルが対レアルで上昇し、終値は0.89%高の1ドル=5.695レアル。日中には一時1%超の上昇を記録した。債券市場では、将来の政策金利動向を反映するDI金利(将来金利)も全体的に上昇し、ここ数日の下降基調を覆した。
米国の動向にらみ、慎重姿勢が支配
投資家心理を左右したのは、米連邦準備理事会(FRB)の5月会合議事要旨と、今週発表が予定されている半導体大手Nvidiaの決算だった。ニューヨーク市場では主要指数が終日方向感に乏しく推移し、引けにかけて下落に転じた。米経済やインフレ見通しを巡る不透明感が根強く、投資家は慎重な姿勢を強めている。
ASAのエコノミスト、アンドレッサ・ドゥラン氏は「FOMC(連邦公開市場委員会)ではほぼ全ての参加者が『インフレは予想以上に根強い可能性がある』と指摘した。議事要旨の内容自体に目新しさはなかったが、会合後には通商政策に変化が見られ、特にトランプ政権時代の対中政策に関するスタンスが修正された」と解説。その上で、「インフレリスクが依然高い中、金融緩和の必要性は低下し、高金利の維持が長期化する公算が大きい」との見方を示した。
IOF(金融取引税)を巡る混迷と経済指標
国内では、金融取引税(IOF)の見直しを巡る政府の対応が引き続き市場の注目を集めた。財務省は、税収減を補填するため、総額14億レアルに及ぶ政府系ファンドからの資金引き上げを決定。対象は、FGO(信用保証基金)およびFGEDUC(教育融資保証基金)で、連邦政府はすでに国営銀行のブラジル銀行およびカイシャ・エコノミカ連邦に対し、正式に通知を送付している。
さらに経済紙「ヴァロール・エコノミコ」によれば、歳出削減規模は当初の313億レアルから330億レアルへと拡大される可能性もあるという。財務相のフェルナンド・アダジ氏は、今週末までに詳細を定めた大統領令を公布する予定であると述べている。
今回のIOF見直しでは、法人向け与信や国外送金に関する税率が引き上げられる一方、一部の措置は見直し・撤回された。例えば、個人の海外送金や投資信託向け資金移転に対する課税強化は見送られた。財務省のダリオ・ドゥリガン次官は「他の選択肢を検討している」と述べており、今後も制度設計に修正が加えられる可能性がある。
アズール、米国でチャプター11申請 株価は乱高下
個別銘柄では、航空会社アズール(AZUL4)が注目を集めた。27日、同社は米国で連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請し、事業再建に乗り出すと発表。新型コロナウイルス禍で膨らんだ債務の再編を図るもので、機材の35%削減と財務レバレッジの縮小を見込む。CEOのジョン・ロジャーソン氏は「コロナ禍で積み上がった借金を整理する機会だ」と語った。
この発表を受け、同社株は序盤に急落し1レアルを下回ったものの、その後はやや回復し、終値は3.74%安の1.03レアル。ライバルのゴル(GOLL4)は0.79%高の1.28レアルと対照的な動きを見せた。政府関係者は「アズールの再建計画に信頼を置いている」との声明を出したが、市場の反応は冷ややかだった。
ヴァーレやペトロブラスの下落がIbovespaを圧迫
アズール株の動向は指数全体への影響は限定的だった。一方で、鉱業大手ヴァーレ(VALE3)は3日続落となる0.80%安、石油大手ペトロブラス(PETR4)も国際原油価格の上昇を背景に反転できず、0.32%下落した。
金融株も軟調で、ブラジル銀行(BBAS3)は1.99%安と大きく下げ、同日の売買代金トップ。唯一、ブラデスコ(BBDC4)は0.69%高と健闘したが、全体の下げ圧力を打ち消すには至らなかった。
一方で、一部の銘柄は相場の下支え要因となった。食肉加工大手JBS(JBSS3)は2.62%高、スーパーマーケットのアサイ(ASAI3)は0.26%高、家電小売りのマガジン・ルイザ(MGLU3)は2.25%高となった。再生可能エネルギー企業ブラヴァ・エネルジア(BRAV3)は「ポイズンピル(買収防衛策)」廃止の報道を受け、4.28%高と大幅に上昇した。
ただし、昨日の上昇分を帳消しにするような売りが目立ち、特に鉄鋼大手CSN(CSNA3)は財務状況や資本配分に対する懸念から3.67%安と大きく値を下げた。
今後の焦点は失業率と米国の経済指標
28日には、ブラジル国内で4月の失業率が発表される予定で、6.9%が市場の予想。さらに米国では、1〜3月期GDPの改定値と物価動向を示すPCEデフレーターが週末にかけて発表される見込みであり、政策金利の先行きに影響を与える可能性がある。
経済の先行き不透明感が強まる中、金融市場は引き続き内外の動向をにらみながらの神経質な展開が続きそうだ。