ふるさと巡りSC州=地域貢献大な移民に出会う旅=《2》剣道に夢殿、手打ちそばで歓迎

 平和の鐘公園から再びバスに乗り、ラーモス移住地の皆さんのいる場所へ。南部にたくさん生息するパラナ松に囲まれて、鳥居がジャングルジムのようになっている入り口をくぐる。鳥居が名物だと聞いていたので、鳥居の形が日本とは違うことにちょっとがっかりしていたら、なんと、奥に巨大な鳥居があり、その後ろには伏見稲荷のようにずらりと80基ほどの鳥居が並んでいて、さらにその奥には大きな茅の輪まであり、その先に神様が祀られていた。聞けばここにゆくゆくは神社を建てる予定だそうだ。
 次に、広々とした文武館に案内された。クリチバ総領事館を通し、日本の草の根文化無償資金協力を得て2022年に建設されたそうだ。当時はコロナ禍だったが、ラーモス武道愛好会の方たちがボランティアで、以前の文武館の資材も活用し、総出で床貼りなどもしたという。奥には神棚を配し、その両側には「文武両道」「精進練磨」の額がかけられている。

パラナ松と千本鳥居とアジサイ

 奈良県出身、元ラーモス日伯文化協会会長の尾中弘孝さんと長男の尾中エルネスト・エイサクさん、長女の尾中エウザミ美和さんが剣道に力を入れていて、「子どもたちの精神的な成長に役立っている」と力強く語る。剣道の道具もきちんと並べられていて、ピカピカに磨き上げられた床が、それを物語っていた。
 次に道路の反対側にある「八角堂・夢殿」へと足を進める。こちらも草の根資金をもとに2008年に建設されたもので、奈良の八角堂を模して建てられ、たくさんの窓から光が入り込む。現在は「地域の物産などを売るイベントなどで使っており、ゆくゆくは日本の道の駅のように活用したい」(美和さん)そうだ。
 パラナ松の間から月がのぞき始め、再度道路を渡り、ラーモス日伯文化協会の会館へと案内された。初めに、ラーモス移住地の入植当時から現在までの歴史がスライド上映された。公園や鳥居、文武館の建設など施設が新しくなるだけでなく、剣道も世界大会に参加したり盆踊りや桜祭り、平和運動など活発に活動している様子が紹介された。

文武館にてラーモス日伯文化協会尾中弘孝元会長(右)

 エルネスト・エイサク会長が日本語であいさつ、谷口県連会長へラーモス移住地の50年史(現在は61周年)が手渡された。奥には仏壇と卒塔婆があり、ラーモス移住地の過去帳も置かれていた。弘孝元会長が般若心経を唱える中、参加者全員がラーモス移住地の先人にお線香をあげた。
 ブラジル各地のコロニアがどんどん縮小していく中、ここラーモス移住地はまだ元気で正直驚いた。第一陣移住者の小川渡さんの長男、なおきさん(54歳)にその秘訣を伺うと、やはり尾中一家が活発に活動しているからだという。特に剣道での絆が強いそうだ。2世が若い世代だということが、他の移住地と異なるのだろうか。

ラーモス日伯文化協会の会館でもてなしを受ける参加者一同

 当地の名産である梨と柿が山盛りで用意され、ブラジルでは珍しいソース焼きそばや、会員が持ち寄った手料理のほか、手打ちそばもふるまわれた。先週収穫したそばを、このためにうってくれたそうだ。手厚い歓迎に、参加者もラーモス移住地の方たちとの交流が盛り上がり、ホテルに着いた時は22時半を回っていた。(麻生公子記者、つづく)

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