週明けのブラジル株式市場は大幅安となり、主要株価指数Ibovespa(イボベスパ)は前週末比1.22%安の13万3,491.23ポイントで取引を終えた。ペトロブラス株の急落や、今週予定されている中央銀行の政策金利決定を前にした警戒感が重しとなった。
今週は、ブラジルと米国でそれぞれ金融政策決定会合が予定されており、「スーパー水曜日」と称される7日(水)に注目が集まっている。市場では、ブラジル中銀による0.5ポイントの利上げ、米連邦準備制度理事会(FRB)による据え置きが概ね予想されているものの、両国の中央銀行が発信する今後の政策スタンスへのメッセージに関心が寄せられている。
ペトロブラス株、3.7%安 ディーゼル価格引き下げが重荷に
この日の市場では、石油大手ペトロブラス(PETR4)がディーゼル燃料価格の引き下げを発表したことを受け、株価が一時3.73%安まで下落。値下げ幅は控えめと受け止められたが、政治的影響が懸念されている。また、鉄鉱石相場が中国の祝日により指標不在となる中、資源大手ヴァーレ(VALE3)は小幅高(+0.30%)となり、相場全体を一定程度下支えした。
銀行株はまちまちで、ブラジル銀行(BBAS3)が0.76%上昇した一方、イタウ・ウニバンコ(ITUB4)は1.78%安と下落。小売株も冴えず、マガジン・ルイザ(MGLU3)は5.04%安、ロハス・ヘネール(LREN3)は1.55%安、GPA(PCAR3)は2.31%安となった。GPAでは、投資家ネルソン・タヌーレ氏が支配するファンドが取締役会に1名のみを送り込んだことも話題となった。
業績発表では、食品大手エム・ジアス・ブランコ(MDIA3)が市場予想を下回る第1四半期決算を発表し、株価は7.10%急落。航空会社では、ゴル(GOLL4)が4.00%安、アズール(AZUL4)が0.68%安と引き続き軟調だった。一方で、教育関連ではユドゥクス(YDUQ3)が2.13%高、コグナ(COGN3)が8.81%高と買われた。コグナに関しては、ユドゥクスとの合併観測が再燃している。
為替市場ではドルが反発、R$5.69台に
為替市場では、米ドルが対ブラジルレアルで0.61%上昇し、1ドル=5.6905レアルで取引を終えた。年初来では依然として7.91%の下落率となっているが、利上げ観測と米中貿易摩擦の再燃懸念が買い材料となった。6月限先物は5.7255レアルで取引されている。
トランプ政権の再登場と関税強化 米市場にも警戒感
米国市場では、FRB会合を前にした様子見ムードに加え、トランプ大統領による通商政策への懸念が重なり、主要指数が軟調に推移した。トランプ氏は、映画産業を対象とした新たな関税措置を発表し、ストリーミングサービス各社への波及懸念が広がった。財務長官スコット・ベセント氏は、関税・減税・規制緩和の三本柱が米国経済の長期的成長を促すと述べたが、市場の反応は限定的だった。
ブラジルでは、フェルナンド・ハダジ財務相がベセント長官との対話を通じ、「米国との間に関税に関する理解があった」とコメントしている。
Ashmore、「侮れぬ国」ブラジルに注目
一方、英資産運用会社アシュモアは最新のレポートで、割安な評価を受けているブラジル資産が再び国際的な投資家の注目を集めていると分析。特に2024年末時点での資産価格が「屈辱的な水準」にまで下がっていたことを指摘し、今後の構造改革次第では高いリターンが見込めると述べた。
ブラジルは2024年に実質GDP成長率3.4%を記録、失業率も6.2%と2015年以来の低水準となったが、公共支出の増加が財政赤字(対GDP比8.5%)の拡大を招いており、持続可能性には疑問符が付く。公的債務残高はGDP比で76%と、他の新興国と比べても高水準だ。
同社は、為替レートの下落、実質金利の高さ(ほぼ10%)、割安な株価水準を現在の魅力として挙げているが、財政運営に対する信認の回復が不可欠とみている。2026年の大統領選を控え、ルーラ政権は政治的な求心力を失いつつあり、投資家は先行きの財政運営能力に対して懐疑的な見方を強めている。
ブラジルは世界最大の農産物輸出国であり、水力発電を中心とした再生可能エネルギーの割合も高い。資源面でも、鉄鉱石や原油の供給国として世界的な存在感を維持しており、根本的な経済基盤はしっかりしているとの認識が示された。今後は、短期的な財政出動に頼るのではなく、生産性向上に資する投資を優先するべきだとの提言も添えられている。
「未来の国」として何度も期待されてきたブラジル。その“未来”を実現するかどうかは、政策運営にかかっている。