ブラジル株式市場の主要指数であるボベスパ指数は7日、米国市場の持ち直しを受けて午後にかけて下げ幅を縮めたが、最終的には前日比0.09%安の13万3,397.52ポイントで取引を終えた。取引高は197億レアルと、やや控えめな水準にとどまった。週間では1.28%の下落、月初来で1.24%のマイナスとなっているが、年初来では依然として10.90%の上昇を維持している。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言を受け、米株式市場は一時不安定な動きを見せたが、引けにかけて上昇に転じ、投資家心理をある程度下支えした。
午後の市場では、FRBの政策金利据え置き決定が明らかになったものの、大きなサプライズはなかったとする声が多かった。RBインベストメンツのチーフストラテジスト、グスタボ・クルス氏は、「FRBは政策金利を年4.25~4.50%に据え置いたが、同時に、インフレと雇用の双方にリスクがあることを強調した」と指摘。「FRBが重視するデュアルマンデート(物価安定と雇用の最大化)の間で、どちらを優先すべきか判断が難しい状況が続いている」と述べた。
パウエル議長の記者会見中には、金利の引き下げを急がない姿勢が改めて示され、一部で「タカ派的」とも受け取られる発言が見られた。その結果、米国債利回りは一時的に変動し、為替や新興市場にも影響が及んだ。もっとも、ブラジル株の反応は限定的で、ボベスパ指数は終日13万3,000ポイント台を中心に推移した。
ニューヨーク市場では、主要3指数がそろって上昇。ダウ平均は0.70%高、S&P500は0.43%高、ナスダック総合指数も0.27%上昇して取引を終えた。
ブラジル市場では、政策金利発表を前に一部の金融株が上昇した。イタウ・ウニバンコ(ITUB4)が1.10%高、サンタンデール(SANB11)が0.35%高、バンコ・ド・ブラジル(BBAS3)が0.42%高と堅調だった。国営石油大手ペトロブラス(PETR3/PETR4)はまちまちで、普通株が0.65%高、優先株が0.46%高。時価総額で指数最大構成銘柄のヴァーレ(VALE3)は0.19%の小幅安だった。
上昇率の上位には、エネバ(ENEV3)が4.15%高、クラビン(KLBN11)が2.68%高、ミネルバ(BEEF3)が2.57%高で続いた。一方、下落が目立ったのは、RD Saúde(RADL3)が14.76%安、VAMOS(VAMO3)が7.05%安、ウルトラパール(UGPA3)が4.00%安など。
また、パウエル議長は、過去にトランプ大統領からFRBの政策運営をめぐって繰り返し批判されていたことについても触れ、「これまで大統領と会談する理由は一度もなかったし、今後も会談を求めることはない」と明言。FRBの独立性を強調した。
資産運用会社Asset 1のチーフエコノミスト、ルイス・セザリオ氏は、今回の会見でパウエル議長が「当面は金利を据え置き、経済情勢を見極めたい」と慎重姿勢を改めて示したと分析する。「物価上昇と失業の双方にリスクが存在するとの認識を強めており、FRBが今後どちらを優先するかの判断は依然として不透明だ」と述べた。
B.Sideインベストメンツのチーフエコノミスト、エレナ・ヴェロネーゼ氏も「パウエル議長は関税の影響が見通せるまで利下げに踏み切るのを控えたいとの姿勢をにじませた」と指摘。その上で、「インフレ高進と雇用減少のリスクが同時にあることを考えると、FRBが暗黙のうちにスタグフレーションの可能性を意識しているとも読み取れる」との見方を示した。
金利は14.75%に 過去20年で最高水準に回帰
同日夜、ブラジル中銀のCopomは政策金利を0.5ポイント引き上げ、年14.75%とする決定を発表した。この水準は2006年7月以来、約20年ぶりの高水準だが、当時は利下げサイクルの途上だった。
2005年5月には19.75%まで引き上げられていたが、その後、インフレの沈静化傾向を受けて徐々に利下げが進められた。当時のCopomは、「景気指標が力強さを示す中、インフレ抑制のために積極的な金融政策を維持する必要がある」として段階的な利下げを開始。2007年9月には11.25%まで低下した。
今回の利上げは、物価上昇と経済減速という二重のリスクに直面する中での決定であり、今後のブラジル経済の行方に対する注目が一層高まっている。