ブラジル中央銀行の金融政策決定会合(Copom)は7日、政策金利(Selic)を年14.75%へと0.50ポイント引き上げることを全会一致で決定した。利上げ幅は市場予想通り0.50ポイントにとどまり、これまで4回連続で実施されてきた1ポイント幅の利上げからはペースを緩めた格好となった。
中銀は声明において、インフレリスクが通常よりも高まっているとの認識を示し、今後の政策運営においては「これまでの金融引き締めの影響がまだ完全には現れていない段階にあるため、さらなる慎重さと柔軟性が求められる」と強調した。
不透明な外部環境と堅調な国内経済
中銀は今回の声明で、米国の通商政策などによる外部環境の不確実性が引き続き金融市場に大きな影響を与えていると指摘。資産価格の変動性が高まるなか、各国中央銀行は一段と慎重な対応を迫られている。
一方、ブラジル国内では経済活動と労働市場が引き続き底堅さを示しているが、成長ペースには若干の鈍化が見られ始めているという。インフレ率は依然として目標水準を上回って推移しており、インフレ予想もやや高止まりしている状況だ。
中央銀行の調査「Focus」によると、2025年のインフレ予想は5.5%、2026年は4.5%と、いずれも目標水準を上回っている。Copomが今回の判断で重視した2026年のインフレ見通しは、基準シナリオで3.6%とされた。
上下双方向に広がるインフレリスク
Copomは声明の中で、インフレリスクが上下いずれの方向にも「通常を上回る水準」で存在すると分析。上方向のリスクとしては、(1)インフレ予想の長期的なアンカー外れ、(2)需給ギャップの影響によるサービス価格の粘着性、(3)為替レートの持続的な下落など外的・内的要因の組み合わせを挙げた。
一方、下方向のリスク要因としては、(1)国内経済の予想以上の減速、(2)通商ショックや地政学的リスクによる世界経済の急減速、(3)コモディティ価格の下落がデフレ圧力となる可能性などを列挙している。
また、米国の政策動向や国内の財政運営は市場の期待形成に影響を与えており、中銀は「財政政策の展開が金融政策および金融市場に及ぼす影響を注意深く見極めていく」とした。
長期的な引き締め継続を示唆
こうした状況を踏まえ、Copomは「インフレを目標水準に収束させるには、引き続き高水準の政策金利を長期にわたって維持する必要がある」との認識を示した。また、物価安定を最優先としつつも、「経済活動の変動緩和および完全雇用の促進にも資する判断である」と述べた。
次回の会合については「経済の不確実性が高く、累積的な金融政策の影響もまだ見極め段階にある」として、追加の慎重姿勢を示すとともに、「物価動向、インフレ期待、需給ギャップ、リスクバランスなどの指標を注視し、柔軟に対応していく」とした。
今回の決定には、ガブリエル・ガリポロ総裁を含む9人の全委員が賛成した。