週末6日(金)のブラジル株式市場は、冴えない値動きで取引を終えた。主要株価指数Ibovespa(イボベスパ)は前日比0.10%安の13万6,102.10ポイントと小幅に下落。週間では0.65%のマイナスとなり、これで3週連続の下落を記録した。米国市場が堅調だったのとは対照的な動きとなった。
外国為替市場では、米ドルが対レアルで0.28%下落し、1ドル=5.570レアル。2営業日連続のドル安・レアル高となった。金利先物市場(DI)も全体として低下傾向を示した。
米国の雇用統計でNY市場は反発、景気後退懸念が後退
米国では、5月の雇用統計(ペイロール)が市場予想を上回る強い内容となったことを受けて、主要株価指数がそろって1%以上の上昇を記録。景気後退への懸念が後退し、投資家心理が改善した。
英ケンブリッジ大学クイーンズ・カレッジ学長で著名経済学者のモハメド・エラリアン氏は、SNS「X(旧Twitter)」で「今回の雇用統計は、FRBによる利下げ観測を後ろ倒しにする可能性を示唆している」との見解を示した。
一方で、トランプ前大統領はFRBのパウエル議長に対し利下げを促す圧力を再び強めており、政治的な影響も意識されている。
C6バンクのエコノミスト、クラウディア・ロドリゲス氏は「今回の雇用統計は、米経済が減速局面にあるものの、リセッション(景気後退)入りには至っていないという見方を補強するもの」と指摘。そのうえで、「インフレが依然として根強いことを踏まえると、FRBは利下げに慎重な姿勢を維持する公算が大きく、2025年末まで政策金利を据え置く可能性もある」と述べた。
ブラジルでは逆に利上げ観測も
一方、ブラジル国内では物価抑制に向けた金融引き締めの継続を見込む動きが広がっており、一部市場参加者の間では、6月18日に予定されている中央銀行の金融政策決定会合(Copom)で政策金利(Selic)を0.25ポイント引き上げるとの観測も浮上している。
そうしたなか、経済指標の一部には明るい兆しも見られた。5月のIGP-DI(総合物価指数)は市場予想を上回る下落を記録し、0.85%のデフレとなった。また、4月の生産者物価指数(PPI)もマイナスを示した。
ブラジル工業連盟(CNI)によれば、4月の工業部門の雇用は18か月ぶりに減少に転じており、高金利政策が需要抑制効果を発揮し始めている可能性がある。
ルーラ大統領は、フランス訪問中に「悲観論者に反して、ブラジル経済は世界平均を上回る成長を遂げる」との見通しを示し、強気の姿勢を崩していない。
銀行・小売セクターに重し JBSは最終取引日に高騰
市場全体がさえない展開となるなか、特に銀行株がIbovespaの下押し要因となった。特にブラジル銀行(BBAS3)は2.38%の下落となり、農業セクターでの貸し倒れリスクの高まりが懸念された。その他、サンタンデール(SANB11)が0.73%安、ブラデスコ(BBDC4)が0.06%安と冴えない。一方、イタウ・ウニバンコ(ITUB4)は後場にプラス圏に浮上し、0.25%高となった。
小売株にも売り圧力がかかり、マガジン・ルイザ(MGLU3)が5.57%安、ロジャス・ヘネール(LREN3)が4.67%安となった。MGLU3は年初来で約60%上昇していたが、この日は調整が入った。
医療保険のハプヴィダ(HAPV3)も1.46%安と軟調。
一方、素材・エネルギー関連では一部明るい材料も。鉄鉱石関連のヴァーレ(VALE3)は0.13%高、原油価格の上昇を背景にペトロブラス(PETR4)は0.92%高となった。
注目されたのは食肉大手JBS(JBSS3)で、1.93%高と堅調。同社の普通株はこの日がB3(ブラジル証券取引所)での最終取引日となり、週明けからはBDR(預託証券)での取引に移行する。
製紙大手スザノ(SUZB3)も、米キンバリー・クラークとの合意を好感し、前日に6%超上昇した勢いを引き継ぎ、0.98%の続伸となった。
来週は物価統計が相次ぐ山場に
来週は経済指標が相次ぎ、市場の変動要因となる見通し。11日(火)には5月のIPCA(広範囲消費者物価指数)、12日(水)には米国のCPI(消費者物価指数)が発表され、ともに+0.30%の上昇が予想されている。
13日(木)は米国のPPI(生産者物価)とブラジルの小売売上高、14日(金)はブラジルのサービス業統計が控える。さらに週初には、財務省が為替取引税(IOF)改革案に関する声明を発表する見通しで、金融市場の反応が注目される。
喜ぶのは誰か、泣くのは誰か——答えは来週に持ち越しとなるが、波乱含みの展開となることは間違いなさそうだ。