週明けのブラジル株式市場は、米国が「メモリアルデー」の祝日で休場となったことから、低調な商いの中で緩やかな上昇を見せた。主要株価指数であるIbovespa(イボベスパ)は、前営業日比0.23%高の13万8,136.14ポイントで取引を終えた。上昇幅は311.85ポイント。出来高はきわめて低く、過去1年で最低水準を記録した。為替市場では、商業ドルが0.52%上昇し、1ドル=5.675レアルで引けた。金利先物(DI)は全般にわたって低下した。
米国市場が休場となる中、欧州市場は26日(日)に行われたトランプ前米大統領と欧州委員会のフォンデアライエン委員長との会談を材料視。これを受けて米国政府がEUに対する新たな関税導入を延期したとの報道が投資家心理を下支えし、欧州株は上昇した。しかしながら、市場全体のムードはどこか弛緩しており、静けさの中での取引が続いた。
ハダジ財務相の発言、議会と火花
国内では、注目材料が乏しい中で、ハダジ財務相の発言が話題を呼んだ。同氏はリオデジャネイロで開催されたイベントで、「財政枠組み(アーカボウソ)の維持は、連邦議会に大きく依存している」と発言。これに対し、連邦下院のウーゴ・モッタ議長は、「支出が収入を上回る者は被害者ではなく加害者だ」と強い口調で反論し、行政側が無制限に支出を拡大した上で、その制御を議会に押し付ける構図を批判した。
ハダジ氏はまた、「政府は構造的な基礎的財政赤字の克服に取り組んでいる」と述べ、財政健全化への意思を強調した。
経済指標と見通し
経常収支に関しては、4月の赤字額が市場予想を下回り、ややポジティブなサプライズとなった。また、中央銀行が公表する市場予測調査「フォーカスレポート」においては、為替(ドル)の見通しが引き下げられる一方、実質GDPの成長率見通しは上方修正された。
銀行株とブラスケムが市場をけん引
低調な商いの中でも、幾つかの銘柄には買いが入り、Ibovespaの小幅高に寄与した。銀行株では、ブラジル銀行(BBAS3)が1.02%高、イタウ・ウニバンコ(ITUB4)が0.21%高、サンタンデール・ブラジル(SANB11)が0.90%高と堅調。唯一、ブラデスコ(BBDC4)は軟調な場面も見られたが、最終的には0.51%高で取引を終えた。
一方、資源・エネルギー株はまちまち。大手鉄鉱石企業ヴァーレ(VALE3)は0.57%安、国営石油会社ペトロブラス(PETR4)は0.32%安となった。原油価格の下落に加え、同社が燃料価格の引き下げを示唆したことが重荷となった。ペトロブラスのマグダ・シャンブリア社長は、「原油価格がさらに下落すれば、ガソリンに限らず燃料価格の引き下げを行う」と述べた。
畜産・食肉加工関連では、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の影響が依然として懸念材料。輸出の見通しに明るさもあるが、ミネルバ(BEEF3)が2.51%安、BRF(BRFS3)が0.51%安と下落した。一方、マルフリグ(MRFG3)は1.09%高と逆行高を演じた。JBS(JBSS3)は、二重上場に伴う不確実性が重しとなり、3.63%下落。
個別銘柄で特筆すべき上昇を記録したのは、ブラスケム(BRKM5)。ノヴォノールがトゥノーレ氏の関連ファンドから買収提案を受けたことが報じられ、同社株は4.15%上昇した。航空大手のアズール(AZUL4)も、投資判断の引き下げを受けながらも4.81%高と急伸した。一方、先週末に急騰していたZamp(ZAMP3)は6.96%の大幅安となった。非公開化の可能性が材料視されたが、過熱感が調整につながった模様だ。
米国市場が27日(火)から再開することに加え、同日は5月のIPCA-15(インフレ先行指標)の発表も予定されており、市場参加者は神経質な展開を迎える可能性がある。
IOF増税の撤回で歳出凍結拡大も 政府は12億レアルの影響を警戒
一方、財政面では、信用・為替・保険取引にかかる金融取引税(IOF)の税率引き上げを定めた大統領令の撤回が、予算執行に深刻な影響を与える可能性が浮上している。
連邦政府の予算執行委員会に所属する専門家によれば、この大統領令が無効となった場合、裁量的経費のさらなる凍結が不可避となり、最大で120億レアル(約3,200億円)規模の議会向け歳出(通称「エメンダ」)が影響を受けるおそれがある。ブラジル紙「フォーリャ・ジ・サンパウロ」が報じた。
この増税措置は、2025年における基礎的財政収支の黒字転換(ゼロ目標)を達成するために政府が掲げる歳入確保策の柱の一つで、2,050億レアルの増収が見込まれていた。すでに政府は7日、3,130億レアルの歳出凍結を発表しており、この中には75億〜78億レアル分のエメンダも含まれている。
今回の増税措置に対しては、野党・自由党(PL)のロジェリオ・マリーニョ上院議員らが、立法府による差し止め(立法令の提出)を推進。アンドレ・フェルナンデス下院議員らも支持を表明しており、「増税による財政健全化は無責任である」との批判が広がっている。
連邦予算ガイドライン法(LDO)は、裁量的経費に対する比例的な歳出凍結を認めていることから、IOFによる増収が失われれば、全体の凍結額は3,130億レアルから5,180億レアルに増加する可能性がある。
連邦予算局のクレイトン・モンテス局長も、2か月に一度の予算見直し発表において、議会向け歳出の凍結額は現時点で約75億レアルと見積もっていたが、税収源が失われた場合にはその規模が倍増する可能性を指摘した。
これを受け、政府は26日(月)に大統領府と経済チームによる緊急協議を実施。増税措置の見直しとして、影響額を約14億レアル削減する方針を打ち出したが、依然として歳入の大部分は確保される見通しであり、今後の議会との調整が焦点となる。