【13日の市況】Ibovespaは前日比1.76%高の13万8,963.11ポイント=ブラジル株、史上最高値を更新=年末までに14万超え予想も

 ブラジル株式市場が13日、歴史的な高値を更新した。代表的な株価指数であるIbovespa(イボベスパ)は前日比1.76%高の13万8,963.11ポイントで取引を終え、終値として過去最高水準を記録した。取引時間中には初めて13万9,000ポイント台に乗せ、13万9,418.97ポイントまで上昇する場面もあった。年初来の上昇率はすでに15.5%に達しており、投資家の間ではさらなる上昇余地を見込む声も聞かれる。

 GCBインベストメントのチーフストラテジストであるルーカス・コンスタンチーノ氏は、今回の上昇は一時的な外部要因だけでは説明できないと指摘する。米国の消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回ったことや、ブラジル中央銀行(BCB)の金融政策委員会(Copom)が利上げ局面の終了を示唆したことは好感されたが、それだけではないという。実際には、為替の安定、将来の金利低下への期待、依然として割安と見なされる株価水準など、複数の内外要因が重なり、ブラジル市場全体に対する投資家の評価が見直されている構図だ。

「相対的勝者」としてのブラジル

 ブラジル市場に対する楽観的な見方は国内外の投資家の間で強まっている。投資銀行XPインベストメントによると、同社がロンドンで実施した機関投資家との面談でも、ブラジルが新興国の中で「相対的な勝者」として評価されているとの声が多く聞かれたという。
 また、ブラデスコBBIは中南米市場におけるブラジル株への配分を引き上げた。同社はラテンアメリカ市場全体が2025年に世界で最も好調なパフォーマンスを見せているとし、「地域全体としての例外的な強さがある」と評価する。
 「市場は長期にわたりファンダメンタルズを無視することができるが、永遠に無視し続けることはできない。長らく割安とされてきたブラジル株は、ようやく芽吹く時期を迎えている可能性がある」と、同社は指摘する。
 Ibovespaは現在でも過去平均と比べて割安な水準で取引されており、背景には高水準の政策金利に伴うリスクプレミアムの存在がある。だが、Copomが利上げの打ち止めを示唆したことで、今後はそのリスク認識に変化が生じ、国内資産の再評価につながる可能性がある。

政策金利と国際マネーフローの行方

 ブラジルが今後、世界主要国の中で唯一大幅な利下げに踏み切る可能性があるとの見方もある。これが実現すれば、国際的な投資資金のローテーションが生じるきっかけとなる。さらに、2026年10月に予定されている大統領選を前に、政治リスクが市場で意識され始めるタイミングでもあり、投資家は一段と慎重かつ戦略的な動きを見せることになるだろう。
 バンク・オブ・アメリカ(BofA)は引き続きブラジルに対して「オーバーウェイト(市場平均以上の投資比率)」のスタンスを維持しており、Selic(政策金利)の初回利下げが2025年12月になると予想する。同社は、2026年末には政策金利が11.25%まで低下する可能性があると見ており、それに伴う企業収益の増加や企業価値の上昇を想定している。
 同社の推奨銘柄では、成長性の高い優良株や金利低下の恩恵を受けるセクターに重点を置いており、新たにエネルギー企業コペル(CPLE6)をポートフォリオに加えた一方、鉄鋼大手のゲルダウ(GGBR4)を除外した。
 そのほか、ポートフォリオにはロハス・ヘネール(LREN3)、JBS(JBSS3)、アサイ(ASAI3)、ペトロブラス(PETR4)、ブラデスコ(BBDC4)、イタウ(ITUB4)、B3(B3SA3)、BTGパクチュアル(BPAC11)などが含まれている。
 BofAが5月に実施した調査では、ラテンアメリカの資産運用担当者のうち43%が「2025年末までにIbovespaが14万ポイントを超える」と回答しており、前月の18%から大幅に増加している。

モンテブラボ社は15万ポイントを視野に

 証券会社モンテ・ブラボは、Ibovespaの2025年末の目標値を従来の13万8,000ポイントから15万ポイントに上方修正した。インフレ期待の改善により金利カーブの低下が見込まれることが、背景にある。

一方で警戒も必要

 楽観ムードが広がる一方で、注意すべきリスクも存在する。XPインベストメントは「リスクプレミアムの低下」「企業利益の鈍化」「外国人資金への依存」「テクニカル要因による調整リスク」「マクロ経済不透明感」など5つの警告サインを挙げる。
 BBIも、依然としてリスクプレミアムが高水準にあると指摘しており、インフレ期待の再固定や利上げサイクル終了の兆候があるものの、引き続き注意が必要との見方を示している。

国内要因も株価を押し上げ

 この日の株価急騰には、複数の要因が重なった。まずはCopom議事録が公表され、前週の会合での金利据え置き判断を裏付ける「中立的」な内容であったことが安心感を与えた。市場では、6月18日の次回会合での追加利上げの有無が注目されている。
 国際的には、米CPIの結果が穏やかだったことや、半導体大手エヌビディアがサウジアラビアとの交渉報道を受けて株価を大幅に上昇させたことも投資家心理を後押しした。加えて、中国の習近平国家主席とブラジルのルーラ大統領が二国間関係の強化を確認したことも、ブラジル市場にとってはポジティブ材料となった。
 個別企業では、ペトロブラス(PETR4)が第1四半期決算を発表し、予想に沿った内容となったことで株価は1.52%上昇。さらに、鉄鉱石価格の上昇を背景にヴァーレ(VALE3)が1.64%上昇し、指数を支えた。
 一方、化粧品大手ナトゥーラ(NTCO3)は6.5%、Hapvida(HAPV3)は11.3%の急騰を見せるなど、四半期決算が好感された企業の株価が大きく上昇した。証券取引所運営のB3(B3SA3)も4.11%上昇し、大手金融機関による格上げが材料視された。
 一方、教育関連銘柄Yduqs(YDUQ3)は第1四半期決算が市場予想を下回り、8.48%下落した。

市場は次の材料を待つ

 14日には、3月のブラジル・サービス業指数が発表される予定で、市場では前月比0.4%の増加が予想されている。高値圏で推移する市場において、引き続き経済指標や企業業績の動向が注目される局面が続く。

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