
独立行政法人国際協力機構(JICA)ブラジル事務所(宮崎明博所長)は5月8日、2023年度3・4次隊として派遣されたJICA日系社会海外協力隊隊員14人による中間活動報告会をJICAブラジル事務所にてハイブリッドで実施した。報告会には2025年4月着任の新隊員11人や派遣中の隊員、JICA職員、在ブラジル在外公館、国際交流基金サンパウロ日本文化センター、ブラジル日本語センターなど関係者約41人が参加。約6時間にわたる長丁場で、各隊員が自身の専門性を活かしつつ、現地社会に根ざした活動を展開する様子に耳が傾けられた。

報告を行ったのは以下の隊員。尾嵜凜太郎(野球、アニャンゲーラ日系クラブ)、垣内颯真(野球、バストス日系文化体育協会)、栗田典和(日本語教育、リオデジャネイロ日本語モデル校)、細川康雄(日本語教育、イボチ日伯文化体育協会)、山路善太郎(高齢者介護、イペランジアホーム)、謝花聡恵(学芸員、サンパウロ人文科学研究所)、橋本理沙(日本語教育、コロニアピニャール日本語モデル校)、万久弘子(日本語教育、アラサツーバ日伯文化協会)、久保田修世(バドミントン、イタペチ農事文化協会)、阿部則子(料理、高齢者養護施設カンポス・さくらホーム)、形山千明(病院運営管理、アマゾニア病院)、木下真梨子(日本語教育、スザノ日伯学園)、手塚楓(日本語教育、インダイアツーバ日伯文化協会)、古里祐佳(日本語教育、ロライマ日伯協会)。
木下真梨子さんは、カンボジアでの経験をきっかけに日本語教育に情熱を注ぎ、ブラジルの現場で教育の質向上に挑戦している。ブラジルならではの多様な課題に直面しながらも、生徒や教師との信頼関係を築くことを大切にしている。
一方、久保田修世さんは、イタペチのバドミントンクラブで持続的な体制構築に尽力。初心者から経験者まで幅広く指導し、州大会でのメダル数が2024年の8個から2025年には16個へと倍増、全体では過去最多となる81個を獲得するなど、成果が顕著に現れている。定期的な練習会や地域間交流イベントを通じて、選手層の底上げと地域コミュニティの活性化を実現し、バドミントンを軸に、人が集まり続ける場づくりを目指している。
また、形山千明さんは、アマゾンの病院運営を通じ、東アジア系としての身体的特性を踏まえた医療支援を実施。「健康な日系社会こそが日伯関係の継続にもつながる」との信念を述べた。

報告会の締めくくりに宮崎所長は、たとえ課題の解決が容易でなくても、計画にとらわれず柔軟に対応し、周囲との関係を築くことが、任期終了時の達成感や充実感につながると述べた。さらに、活動の後半には、自分がいなくなった後も継続する仕組みづくりを意識してほしいと呼びかけた。所長自身も「まだ現場の半分しか回れていないので、皆さんが任期を終えるまでに極力足を運び、現状を把握したい」と語った。