【23日の市況】ブラジル株、IOF増税巡る政府の方針転換を好感し反発=レアルは0.26%高の1ドル5.646レアルに

 ブラジル株式市場は23日、序盤の大幅安から持ち直し、反発して取引を終えた。代表的な株価指数であるIbovespaは前日比0.40%高の13万7,824.29ポイントと、日中の高値圏で引けた。一時は1.66%安の13万4,997.30ポイントまで下落したが、リスク回避姿勢が後退し、終盤にかけて買い戻された。

 市場を取り巻く不安の主因は、ブラジル政府が突如発表した金融取引税(IOF)の増税と、米国のドナルド・トランプ前大統領による新たな貿易関税の警告だった。だが、ブラジル政府は外貨建て投資信託への課税強化方針を一部撤回し、投資家心理が改善。こうした姿勢が、午前中の急落からの回復につながった。

政府の混乱と市場の不信感

 財務省は当初、外国ファンドに対する3.5%のIOF課税を発表したが、市場の激しい反発を受け、同日のうちに一部撤回した。政府は歳出抑制の強化にも言及し、一定の収束を試みた。

 GCBインベストメントのチーフストラテジスト、ルーカス・コンスタンチーノ氏は「政令の一部撤回は一定の安心感を与えたが、そもそもこのような発表に至った事実が問題だ」と指摘。「政府は財政目標達成のために、歳入増に過度に依存していることが明らかになった」とも述べた。

 エンピリクス・リサーチのアナリスト、マテウス・スピエス氏も「撤回は評価できるが、政府の対応には不信感が残る」と厳しく批判した。

 こうした混乱を受け、フェルナンド・ハダジ財務相はサンパウロで記者会見を行い、市場の不安払拭に努めた。同氏は「IOF増税は財政健全化に向けた措置であり、歳入増だけに依存するわけではない」と釈明し、金融政策との整合性についても語った。

市場に広がる「制度の不安定さ」への警戒

 ASAインベストメントのマクロ責任者で元財務次官のジェフェルソン・ビテンコート氏は「政府の政策の不安定さが、投資環境に大きな悪影響を与えている」と懸念を表明。BV銀行のチーフエコノミスト、ロベルト・パドヴァーニ氏は「このような方針転換は昨年にもあった。コミュニケーションの不備が政権の特徴だ」と厳しく語った。

 一方で、ドム・インベストメントのアナリスト、アリソン・コレイア氏は「方針転換は柔軟性の表れであり、今後も市場の反応を見ながら調整していく姿勢が見られる」と一定の評価を与えた。

米国発の外的ショックも影響

 ブラジル国内の混乱に追い打ちをかけたのが、米国のドナルド・トランプ前大統領による保護主義的発言である。同氏は6月1日からEU製品に一律50%の関税を課すべきと表明。さらに、米アップル社が米国外でiPhoneを製造し続けるならば関税を課すと警告した。この発言を受け、同社株は約3%下落し、米市場全体に波紋を広げた。

 とはいえ、米中間の対話再開報道により、ニューヨーク市場は引けにかけて下げ幅を縮小した。

金融市場の動きと主な銘柄の反応

 国内市場では、為替や金利にも激しい変動が見られた。レアルは対ドルで一時1%以上下落したが、最終的には0.26%高の1ドル=5.646レアルで取引を終えた。将来金利(DI)も長短で低下する場面が目立った。

 株式では、資源株と金融株が支えとなった。ヴァーレ(VALE3)は0.17%高、ペトロブラス(PETR4)は0.22%高で引けた。銀行株ではブラデスコ(BBDC4)が1.23%高、イタウ・ウニバンコ(ITUB4)が1.21%高、サンタンデール(SANB11)が0.84%高となった。一方、バンコ・ド・ブラジル(BBAS3)は2.51%安と軟調だった。

 一方で、小売セクターは軟調。マガジン・ルイザ(MGLU3)は4.96%安、ロハス・ヘネール(LREN3)は0.40%安だった。食品大手JBS(JBSS3)は、米国上場計画を巡る動きが注目され、一時上昇する場面もあったが、最終的には1.23%安で取引を終えた。

 中でも注目を集めたのはブラスケム(BRKM5)で、ネルソン・タヌーレ氏による買収提案が伝わり、株価は9.15%急騰した。

週末に向けた展望と来週の焦点

 Ibovespaはこの日こそ反発したが、週間では0.98%安と、6週ぶりの下落で週を終えた。今後の注目は、30日発表の2025年第1四半期GDP(国内総生産)に加え、米国のGDP改定値やPCEインフレ指標など。市場にとって波乱含みの5月最終週となる可能性がある。

 今週の激動の展開を振り返るにあたり、多くの投資家が「焦げ跡を残しながらも、何とか生き延びた」と安堵の表情を見せた。

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