ブラジル株式市場の代表的な株価指数であるIbovespaは8日、前日比0.21%高の13万6,511.88ポイントで取引を終えた。前日に2%以上の大幅上昇を記録したのに続き、週ベースでは1.02%高となり、5週連続の上昇となった。これは2023年10月23日から12月1日までの6週連続上昇以来の記録である。
通貨レアルも堅調で、対ドルでは0.11%上昇し1ドル=5.655レアルとなった。商業ドルの売買レートも同水準をつけ、今週は2週連続の下落。さらに、将来の政策金利の指標となるDI(金利先物)も全体的に低下した。
米中交渉控え米国市場は反落
今回のIbovespaの上昇は主に国内要因、特に企業の四半期決算に支えられたものだが、国際情勢も依然として市場心理に影響を与えている。
米国では主要株価指数が下落。トランプ前大統領が英国との間で新たな貿易合意を結んだと発言しつつも、中国製品に最大80%の関税を課す可能性に言及するなど、米中間の緊張が再燃。米中両国の代表団が今週末にスイスで会談する予定で、投資家はその行方を注視している。中国側は「米国による過剰な関税は一方的で不当だ」と再び非難した。
インフレ鈍化も、金融政策の行方はなお不透明
国内では、4月の全国消費者物価指数(IPCA)が発表され、インフレの伸びがやや鈍化した。しかし食品や医療関連の価格上昇が続いており、ブラジル中央銀行が政策金利(Selic)の引き下げに慎重になる要因となっている。
フェルナンド・ハダジ財務相は米国のスコット・ベセント財務長官が「対米貿易赤字国に対して関税を課すのは異常」との見解を示したと述べた。ハダジ氏はまた、年末のインフレ率は市場予想よりも低くなるとの見通しを示した。
「インフレの減速が緩慢であることは、依然として労働市場が堅調で、総需要を下支えしていることを示唆している。工業製品価格の上昇も見られ、昨年末の為替変動の影響が出ている可能性がある」とASAのエコノミスト、レオナルド・コスタ氏は分析。証券会社XPは、ブラジル経済の今後について「緩やかな減速、粘り強いインフレ、そして変動の大きい為替相場」というシナリオを描く。
イタウが急伸、CSNは急落 四半期決算が明暗分ける
この日の株式市場を動かした最大の要因は、主要企業の2025年第1四半期決算発表である。
注目を集めたのはイタウ・ウニバンコ(ITUB4)。純利益が過去最高となり、自己資本利益率(ROE)が長期にわたり20%を上回ったことが評価され、同社株は5.41%高となった。前日にはブラデスコ(BBDC4)が15%以上上昇しており、連日の銀行株好調が目立った。
小売業ではアサイ(ASAI3)が3.51%上昇。消費行動の変化が下位所得層に広がっているとした。ロハス・ヘネール(LREN3)も好決算を受けて4.92%高と大幅上昇し、第2四半期の見通しも明るいとした。一方で、マガジン・ルイーザ(MGLU3)は6.98%下落、ペッツ(PETZ3)は8.80%安と、不振決算が直撃した形となった。
素材関連では、鉄鋼大手CSN(CSNA3)が9.87%安、子会社のCSNミネラソン(CMIN3)も4.72%安と急落。国内需要は堅調としつつも、輸出に対する関税が足かせになっているとした。住宅建設ではMRV(MRVE3)が11.22%安と大幅下落。米国子会社Resiaの収益性悪化が響いた。一方、テンダ(TEND3)は堅調な利益を背景に13.34%高となった。
航空株に急落の嵐 ゴルが25%下落、アズールも連れ安
四半期決算とは別に、航空セクターではゴル(GOLL4)が25.21%安と大暴落。増資計画が市場の失望を招き、株価は0.89レアルと1レアルを割り込んだ。事業統合を進めているアズール(AZUL4)も11.89%下落し、年初からの下落率は65%近くに達している。
他方、資源関連ではヴァーレ(VALE3)が0.40%高、ペトロブラス(PETR4)も国際原油価格の上昇を受けて0.65%上昇した。
今週は企業決算を中心に激しい値動きが続いたが、来週は主な経済指標の発表が一段落し、やや落ち着いた展開が予想されている。市場の注目は、先日のブラジル中央銀行金融政策委員会(Copom)の議事要旨に移る見通しだ。
為替市場:ドルは小幅安、米中交渉控え様子見姿勢強まる
9日の外国為替市場では、週末の米中通商交渉を控えて投資家の様子見姿勢が強まり、取引は限定的となった。ドルは対主要通貨で下落し、対レアルでは小幅安となった。
この日のドルの終値は0.12%安の5.6551レアル。週を通じてはほぼ横ばいで、0.02%の小幅な下落にとどまった。午後5時8分(ブラジル時間)時点で、6月限先物ドルは0.09%安の5.6840レアルで推移している。
ルーラ大統領、ロシア訪問でプーチン氏と会談 米国の関税政策を批判し対ロ関係強化を強調
ルーラ大統領は9日、ロシアの首都モスクワにてプーチン大統領と会談した。ルーラ氏は、米国のトランプ前大統領による一方的な関税政策を厳しく批判するとともに、ロシアとの経済・技術・防衛分野における協力関係をさらに強化したいと表明した。
今回の訪露は、第二次世界大戦でのナチス・ドイツ降伏から80周年を記念する「戦勝記念日」式典への参加が目的。プーチン政権はこの式典を国際的支持の誇示と位置づけており、ウクライナ侵攻による国際的孤立の中でルーラ氏の訪問は象徴的な意味を持つ。
会談でルーラ大統領は「米国が180以上の国に一方的に課した関税は、自由貿易と多国間主義の原則を損なうものだ」と批判。ロシアとの貿易額は年間125億ドル規模だが、ブラジルにとっては大幅な貿易赤字であることに言及した。肥料の輸入が中心で、ブラジルの農業にとっては重要な供給源となっている。
また、宇宙技術、防衛、教育分野での協力可能性にも触れ、「今回の訪問は、戦略的パートナーシップの再確認と深化が目的だ。ロシアとの間で、政治・経済・文化・科学技術の各分野における関係を強化したい」と語った。
一方で、ウクライナのゼレンスキー大統領はルーラ氏の姿勢を「親ロシア的」と批判。ブラジル国内の野党からも、戦時下にあるロシアを訪問しプーチン氏と会談したことに批判の声が上がっている。
ルーラ氏はこれまで一貫して「対話による解決」を主張しており、ブラジルが属する新興国グループ「BRICS」の一員として、国際関係におけるバランスと交渉の重要性を強調している。