JICA協力隊員リレーエッセイ=ブラジル各地から日系社会を伝える=(38)=たくさんの愛を届けられるように=サントス厚生ホーム=井上彩美

節分での井上彩美さん

 2024年12月からサンパウロ州サントス市にある高齢者養護施設サントス厚生ホームで作業療法士として活動している井上彩美です。
 サントス厚生ホームは1971年にサンパウロ市リベルダージ区にて始まり、かつてサントス港に到着した日本人移民者を援助していた「サントス移民の家」へ1974年に移転しました。援協施設のなかで最も長い歴史があります。生活全般が自立している方から、介助が必要な方も含めて約55名の高齢者が施設で生活しており、そのほとんどが日系高齢者です。
 施設では、カラオケや映画、集団体操が毎週提供されており、日本食の提供や月に1回の誕生日会も盛大に開催されています。
 私は、朝のラジオ体操の提供から始まり、食事前の口腔体操や午後の集団体操、創作活動やレクリエーションを提供している他、節分やひな祭り、こどもの日といった日本文化をテーマにしたイベントの企画・開催をしています。

体操活動の様子

 なかでも、日本文化のイベント開催は高齢者にとって日本との繋がりを感じる大切な活動となっています。子供の頃の懐かしい記憶を思い出して頂きながら童謡の歌唱や創作活動等を楽しんで頂く機会を提供しており、認知機能低下の予防にも有効な活動であると考えています。
 また、日本語でのコミュニケーションも大切な活動のひとつです。従業員の多くはブラジル人であり、日常的なコミュニケーションはポルトガル語が多く用いられます。そのため、日本語でのコミュニケーションも認知機能の低下を予防する助けとなります。
 このように、私の活動を通して入居者様の身体機能・認知機能低下の予防を目指すとともに余暇活動の提供による生活の質の向上を目指して日々さまざまな活動を提供しています。
 現在、施設で活動を開始して半年が経過しました。入居者とのコミュニケーションの多くは日本語を用いていますが、職員との会話はポルトガル語が必須です。苦戦しています。そんな私に対して、従業員のみなさんはいつもとても親切で、ポルトガル語初心者の私に対して積極的に声を掛けて気遣ってくださいます。

体操活動の様子

 また、従業員のみなさんは入居者様に対しても惜しみない愛を注いで働かれている様子を毎日見かけて、私も幸せな気持ちになります。
 ブラジルに来てから、移民や奴隷の歴史、それによって多様な文化が共存していることについて学びました。そのような背景によって私自身も活動や日常の生活において何度もブラジル人の愛の深さに助けられ、学ばせて頂いているなと感じています。
 もっともっとポルトガル語を学んで、私もたくさんの愛を入居者様や一緒に働く従業員、周りで支えてくれる人に言葉や行動で届けられるように頑張りたいと思います。

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