JICA協力隊員リレーエッセイ=ブラジル各地から日系社会を伝える(5)=野球指導で日本文化伝える=パラナ州ローランジア市 森大晴

ローランジア文化体育協会の野球チームの仲間(提供写真)

 パラナ州ローランジア市で活動している森大晴と申します。ローランジア市はパラナ州北部に位置し人口は7万人、日本人移民の歴史は古く、1935年に私の配属先であるローランジア文化体育協会(ACER)が設立されました。市内の移民資料館には、これまで数回日本から皇室の方が来られました。
 また、日本人移民のみならず、ヨーロッパからの移民の歴史も古く、ローランジアという市名は、この街を開いたドイツ人の名前が由来になっています。
 このような様々な文化背景を持つ人々が住む町ですが、「日本人移民の団結力が1番強い」と、ある知人が教えてくれました。配属先主催の下、1年を通して、運動会、すき焼きフェスティバル、お寺でのイベント、忘年会などの様々なイベントが開催されます。
 準備段階からたくさんの人が協力する様子をこれまで私も何度も見てきました。また、卓球、サッカー、ゲートボールなどのスポーツ活動も盛んに行われています。
 私は、この街の6歳から12歳の子どもたちへ野球の指導を行っています。配属先での野球の歴史は古く、協会設立当時から競技が行われていたようです。しかし、出稼ぎや大学に通うためなどの理由で近隣の都市や日本に若い人々が流出したことで、活動が徐々に衰退していき、1990年代に少年野球チームが一度消滅しました。それでも、成人チームは活動を続けていきました。
 時が流れ、活動を続けていた成人達が結婚し、子どもができたことで、練習に彼らの子どもを連れてくるようになりました。そこで、子どもたちにも野球を教え始めたのがきっかけとなり、2018年に少年野球チームが復活しました。当時はまだ公式戦の出場はなく、毎週土曜日に練習を続けていただけのようです。
 そして、2023年3月に私が赴任し、平日の練習も始まりました。現在は、週に5日の練習を行いながら、子どもたちは初めての公式戦を経験することができました。試合では大敗を喫しましたが、1度途切れたチームの歴史が復活し、再び試合に出場するまでの過程に私も携わることができ、それまでの様々な人の努力を思うと感慨深いものがありました。

帽子を放り投げて喜ぶ野球チームの様子(提供写真)

 現在、配属先の野球場では10歳未満の子どもたちから80代までの人々が毎週野球の練習を続けています。成人チームの活動や高齢者の方々が野球の練習をしている様子を見ると、私が関わっている子どもたちも、これから10年後、20年後、さらにもっと先まで野球を続けてくれれば良いなと思います。
 2年間の任期ではありますが、私の活動が、ここローランジア市で再び野球の火が消えないように、また、永く野球の歴史が続いていくために繋がるものだと信じ、残りの期間を頑張っていきたいと思います。

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