JICA協力隊員リレーエッセイ=ブラジル各地から日系社会を伝える=食材豊富なベレン市での活動=パラー州ベレン市 小笠原純子

ベレンの皆さんとにぎやかに活動する小笠原さん(中央奥、提供写真)

 赤道から南に160km、ブラジル北部パラー州の州都ベレン市。アマゾン川河口に位置する人口150万人の大都会。その日系社会の中心「汎アマゾニア日伯協会」の要請で、JICA日系社会シニア海外協力隊として昨年9月より「和食の普及」で活動中です。
 現在の日本の家庭料理を中心に、協会主催で講習会を開催。参加者は80%以上ブラジル人。そのうち30%位は日本語を勉強中で、和食への関心の高さには驚いています。また、「食育」の大切さの実践として幼児教育の協力隊員と「お八つ作り」を実施。
 汽水域の魚の種類の多さ、さらに初めて味わう珍しい数々のフルーツ、その食材で「和」の味を協会のブラジル人スタッフと試作、試食を繰り返しています。

真夏に正月料理 ブラジルの食材に魅せられて

アマゾンの食材で作った正月料理の数々(提供写真)

 「正月料理を作りに来ない? 食材は心配いらない、なんでもあるから」―永住権を取得し、移民の研究のためブラジルへ渡って数年が立った学生時代の友人からの誘い。母の経営する家庭料理の学校で教えて十数年、まだまだと思いつつ、腕試しもしてみたいと、初めての一人旅を決行。
 トランクに必要な道具、正月料理には欠かせない乾物を少しだけ入れて1984年12月26日、地球の反対側に出かけました。初めてよその国で迎える、しかも真夏の正月。
 その時の日系社会との出会い、さらにフェイラや専門店での種類と量の多さの野菜にフルーツ、肉、魚を目の当たりにして、すっかりブラジルのとりこになり、いつかこの食材で思う存分料理がしたい、さらに日本料理の手法や味付けを試したいとの夢が生まれました。
 それは30年以上たった2016年、JICA日系社会シニア・ボランティア(現在の日系社会シニア海外協力隊)として叶い、サンパウロ州モジ・ダス・クルーゼス市近郊の見事な野菜と日系社会の大きなご支援で満足のゆく活動ができました。
 その折り、アマゾン川の魚との出会いがあり、現在はパラー州ベレン市で活動中です。コロナ禍での一時帰国、2年半の待機を経て、再赴任。よく戻ってくれましたとのご挨拶に感激しました。出会いから39年間で5回の真夏の正月、そのたびに新たな食材との出会いを正月料理に取り入れました。
 2024年、6回目の正月料理にはベレン独特の野菜・フルーツ、そして川魚をふんだんに使いたい。もちろん、移民115年を超える中で守られてきた「正月料理」を次の世代に大切に受け継いでほしいと願います。
 「真夏に正月料理」と誘いがなかったら今私はブラジルにはいない。その友人がmarido(夫)です。

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