オピニオン=佳子さま「機内うたた寝動画」が波紋=プライバシーか人間味かで議論=奥原マリオ純

佳子さまがカンポ・グランデに移動する機内でうたた寝する様子を投稿した動画に、16日時点で約5万人のブラジル人が❤️をクリックした(https://www.tiktok.com/@bnewsoficial/video/7515084128040095032)

 日本とブラジルの外交関係130周年を記念して、ブラジルを公式訪問中の秋篠宮家の次女・佳子さま。そのご訪問中、思わぬ形で話題となったのが「機内でのうたた寝動画」でした。
 きっかけは、ブラジル国内線のエコノミークラスで移動中(国内線にはファーストクラスが存在しないため)の佳子さまが眠っている様子を、乗客の一人がスマートフォンで撮影し、SNSに投稿したこと。投稿された動画はすぐに拡散され、驚きや好奇心、そして一部からはプライバシーへの懸念の声があがりました。
 これに対し、13日、宮内庁は異例のコメントを発表。「明らかなプライバシー侵害」であると抗議し、投稿が行われたSNS「X」(旧ツイッター)の運営会社に調査を求めました。実際、Xの規約では「本人の同意なく撮影された映像」の投稿を禁止しています。
 しかし、問題はそう単純ではありません。法律的に見ると、今回のケースは微妙な立場にあります。朝日新聞の取材に答えた弁護士・中沢佑一氏によると、飛行機の客室は「完全なプライベート空間」とは言いがたく、法的にプライバシー権侵害と認められるかどうかは難しいところだといいます。
 とはいえ、たとえ公人であっても、ましてや選挙権も持たない皇族であっても、基本的人権としてのプライバシーは守られるべきだという意見も多くあります。今回の撮影は、公式行事中ではなく、移動中の「休息のひととき」。どんな立場の人でも、疲れて眠ってしまうのは当然のことです。
 SNS上では、この「うたた寝動画」をめぐり、1980年代にイギリスのダイアナ元妃が公務中にうとうとしてしまったシーンを思い出す人も少なくありません。あの時も「スキャンダル」というより「人間らしさ」として受け止められ、多くの人が親しみを覚えました。
 今回の佳子さまも、6月4日から17日まで8都市を巡るハードスケジュールの中で、移動中の短い休息時間。SNS上では「むしろ親近感がわく」「人間らしくて好感が持てる」という温かい声が多く見られます。厳粛な儀式に包まれた皇室のイメージが、少し身近に感じられた瞬間だったのかもしれません。
 この出来事は、現在ブラジルで進むインターネット上の「プライバシーと表現の自由」の議論にも重なります。ブラジル連邦最高裁(STF)は6月11日、SNS上で違法コンテンツが投稿された場合、裁判所命令がなくてもプラットフォーム側が自主的に削除する責任があるかどうかについて、新たな判断基準を示しました。判決の最終決定は6月25日に出る予定です。
 SNS時代において、誰もが簡単に「誰かの日常」を世界に発信できる時代。その一方で、「どこまでが許されるのか」という線引きは、今も世界中で模索が続いています。
 とはいえ、今回の騒動が佳子さまの安眠を妨げることはなさそうです。たとえ高度1万メートルの上空であっても——。

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