
ゴイアス州のセラード地帯、パードレ・ベルナルド市に位置する「地獄の穴(Buraco do Inferno)」は、今なおその全容が解明されていない神秘的な水中洞窟だ。一般的な観光ルートから外れたこの場所は、幅約100メートル、深さ40メートルまで目視できるドリーネ(陥没地形)で形成されており、湖面に太陽光が差し込むことで透き通った鮮やかな青が浮かび上がる。13日付マイス・ゴイアス紙サイトなど(1)(2)(3)(4)報じた。
幻想的な美しさと未知の深さが、この場所を「地獄」と呼ばれるにふさわしい緊張感と魅力に満ちた空間にしている。
この地は私有地内にあり、立ち入りには所有者の許可と高度なダイビング技術が求められる。崩落や視界不良といった自然リスクが常に伴うため、洞窟ダイビングの訓練を受けた専門的ダイバーのみが探検を許されている。
事実、1992年には深さ約35メートル地点で2人のダイバーが命を落とし、2014年にも20メートル地点での崩落事故により1人が60メートル以上流された。奇跡的に生還したが、この出来事がいかに危険な場所であるかを物語っている。
2017年には、テレビ番組『ファンタスチコ』が探検隊に同行し、数カ月の準備を経て185メートルの深度に到達。しかし、未だ底には至っておらず、「地獄の穴」は今なおブラジルでも数少ない〝底知れぬ自然地形〟のひとつとされている。内部には水中トンネルやホールが広がり、魚類、藻類、そしてカメなどが生息。独自の閉鎖的な生態系を築いており、自然科学や生物学の観点からも貴重な研究対象となっている。
この洞窟は、かつて地下水面の上で洞窟の天井が崩壊したことで形成されたものであり、その成り立ちからしても特異である。探検家にとっては未踏の領域であると同時に、強い精神力と専門技術が求められる過酷な挑戦でもある。
近年では雑誌『Mergulhar』などによる探検や、ダイバーによるナイトダイブも行われており、その冒険の様子が記録されている。地元から遠く離れたリオ・デ・ジャネイロから500キロ以上の機材を積んで訪れた探検隊は、深夜からの出発で過酷な撮影と調査に挑んだ。極限の状況下でも彼らを支えたのは、長年にわたる「潜ること」への情熱であった。
この「地獄の穴」は、自然の神秘と人類の好奇心のせめぎ合いが続く、まさに地球上の未知の深淵である。しかし専門家は警鐘を鳴らす。ここは軽率な訪問を許す場所ではなく、許可・装備・訓練のいずれが欠けても命を落としかねない。自然への敬意と慎重な姿勢が求められている。