オピニオン=自由のエスプラナーダ=サンパウロ市長が描くサンパウロ市の新たな象徴=奥原マリオ純

「自由のエスプラナーダ(Esplanada da Liberdade)」の完成予想図(市役所が公開した企画書より)

 ブラジル日報とサンパウロ市の公式スケジュール(https://bit.ly/42Pz6lg)を追っている方ならご存じかと思いますが、リカルド・ヌーネス市長は4月下旬、中国と日本を訪問する公式ミッションに出かけました。
 今回の訪問団には、日系人としてロドリゴ・グラール経済・雇用開発局長と、市議のジョルジ・ハト氏の2人が同行。訪日はわずか数日間ながら、安全、都市交通、持続可能性、起業支援、そして両国間の交流強化をテーマに、ぎっしり詰まった日程がこなされました。
 4月26日には大阪市長との会談と2025年大阪・関西万博の視察、27日には京都御所の訪問、28日には東京都の小池百合子知事との会談と三菱副社長との昼食、杉並区のごみ焼却施設の視察など。そして30日には、日本の外務大臣政務官やJICA(国際協力機構)との会談が行われました。
 とりわけ注目されたのが、JICAとの話し合いの中で取り上げられた「自由のエスプラナーダ(Esplanada da Liberdade)」というプロジェクト。これは、サンパウロ市セントロ地区――とりわけ日系人の象徴とも言えるリベルダージ地区を大きく変えるかもしれない壮大な構想です。
 このプロジェクトは、7期務めた元市議アウレリオ・ノムラ氏の提案によるもので、ラジアル・レステ大通りの上に巨大なデッキを建設し、リベルダーデ地区の三つの陸橋をつなぐ新たな都市空間を生み出すというもの。文化、商業、飲食、観光、レジャー、サービスが一体となった新しい公共スペースの創出を目指しています。
 現在、週末には約2万人がリベルダーデを訪れますが、七夕祭りなどのイベント時には12万人にも達します。狭いスペースに人が密集しすぎている現状を見れば、観光地としてのポテンシャルを広げ、雇用やビジネスの創出に寄与する新たな空間の必要性は明白です。
 このため、JICAブラジル事務所との追加協議が予定されており、「自由のエスプラナーダ」に加えて、都市排水、洪水対策、危険区域での公共事業についても協力の可能性が探られています。
 もしこの構想が2028年、つまり日本人移民120周年という節目の年に実現すれば、ヌーネス市長の名はサンパウロの新たなランドマークとともに語られることになるでしょう――夢のある話です。
 ただし、そこには大きな前提があります。リカルド・ヌーネス氏が2026年の州知事選への出馬を見送り、2期目の市長任期を全うすることです。果たしてそれが現実的か? 正直、私は懐疑的です。政治の風向きは、来年にはまた大きく変わっているかもしれません。

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