【27日の市況】ブラジル株、再び最高値更新 インフレ指標が利上げ停止観測を後押し

 ブラジル株式市場は27日、大幅に上昇し、主要株価指数であるボヴェスパ指数(Ibovespa)は前日比1.02%高の13万9,541.23ポイントで取引を終えた。上げ幅は1,405.09ポイントに達し、取引時間中には一時14万381.93ポイントをつけ、史上最高値を更新した。

 為替市場でもブラジルレアルは堅調に推移し、対ドルで0.53%上昇して1ドル=5.645レアルとなった。債券市場では、将来の政策金利を反映する利回り(DI)も前日に続いて全体的に低下した。

インフレの鈍化が好感される

 この日の相場上昇を主導した要因の一つが、5月のIPCA-15(広義消費者物価指数)の結果である。IPCA-15は月中に発表されるインフレの先行指標で、今回の上昇率は市場予想を下回る0.36%にとどまった。とりわけ航空券の値下がりが、インフレ鈍化に寄与した。

 資産運用会社ASAのエコノミスト、レオナルド・コスタ氏は、「サービスと財のコアインフレの両方が減速し、今年で最も質の高いIPCA-15だった」と評価する。ただし、同氏は「3カ月移動平均で見た場合のインフレ率は年率換算で7.4%と、依然として目標(中央値3.0%、上限4.5%)を大きく上回っている」と指摘。金融政策に関しては「これは利上げ局面の終盤を示唆する好ましいサプライズであり、6月の中銀会合では現行の年14.75%の政策金利を据え置く可能性が高い」との見方を示した。

米欧市場も上昇 対EU関税の先送りを好感

 外国市場も総じて明るい展開となった。米国ではメモリアルデーの祝日明けの取引で主要株価指数が大幅に上昇。これは、トランプ前政権によって導入が予定されていた欧州連合(EU)への新たな関税が延期されたことが好感されたためだ。

 ニューヨーク市場の動きは南米にも波及し、欧州市場も揃って上昇した。米国の5月のコンファレンスボードによる消費者信頼感指数も改善し、世界景気回復への期待感が広がった。

バリュー株が上昇けん引も、ヴァーレの下落が重しに

 ブラジル株の主な銘柄では、鉄鋼や小売株が上昇をけん引した。製鉄大手ゲルダウ(GGBR4)は2.81%高となり、小売りではアサイ(ASAI3)が7.61%、ロジャス・ヘネール(LREN3)が1.18%上昇した。IPCA-15の鈍化とそれに伴う金利低下が小売株への追い風となった。

 一方で、鉱業大手ヴァーレ(VALE3)は0.31%下落し、指数全体の上昇を抑える要因となった。CSNミネラソン(CMIN3)は大手銀行による投資判断引き下げを受けて5.80%安。ビール大手アンベブ(ABEV3)も0.42%下げた。その他では、航空会社アズール(AZUL4)が1.83%下落するなど、下げ銘柄も一部見られた。

 石油関連では、ペトロブラス(PETR4)が0.73%高、独立系石油会社PRIO(PRIO3)が0.92%高となった。国際原油価格は下落傾向にある中での堅調ぶりが目立った。

利上げ打ち止めの見方広がるも、利下げは時期尚早

 5月のIPCA-15が市場予想を下回ったことを受け、6月の金融政策決定会合での政策金利据え置きの可能性が高まっている。

 G5パートナーズのチーフエコノミスト、ルイス・オタヴィオ・レアル氏は「IPCA-15の今回の結果は、素直に良い数字だった」とし、「6月18日の会合で利上げは見送られる可能性が高い。市場では据え置きの確率が70%から76%へと上昇した」と述べた。

 ただし、利下げについては慎重な見方が広がっている。インテル銀行のチーフエコノミスト、ラファエラ・ヴィトリア氏は「12カ月ベースで見ると、コアインフレは5.1%、サービスインフレは6.5%と、目標上限を上回っている」とし、「物価の減速傾向が続けば、年末には利下げ議論も始まるだろうが、現時点では時期尚早」と語った。

 C6銀行のクラウディア・モレノ氏も「IPCA-15はポジティブサプライズだったが、年間では依然5.4%の上昇率であり、目標を上回っている」と指摘。同氏は「国内の労働市場の過熱や為替の減価見通しといった要因から、インフレには依然として上昇圧力がある」との見方を示し、6月会合での追加利上げの可能性を残している。

今後の注目材料はFOMC議事録と国内雇用統計

 28日(水)は市場にとって重要な一日となる。米連邦準備制度理事会(FRB)が最新の金融政策会合の議事録を公表する予定で、利下げ時期やインフレ見通しについての手がかりが注目される。

 国内では、雇用情勢を示すCaged(雇用創出・消失統計)と、財政状況を示す政府債務のデータが発表される予定である。加えて、米中・米欧間の通商政策を巡る動きも、引き続き市場の注目を集めそうだ。

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