21日のブラジル株式市場は下落して取引を終えた。代表的な株価指数であるボベスパ指数は前日比0.44%安の13万7,272.59で終了した。終値としては、取引時間中の高値13万8,837.08ポイント、安値13万7,087.96ポイントの中間水準となった。出来高は248億レアル(約7,600億円)に達した。
この日の市場は、国営石油大手ペトロブラスの株価下落や、政府による歳出抑制策の発表、さらには取引終了後に正式に明らかとなった金融取引税(IOF)の引き上げ方針などが複合的に影響し、投資家心理が悪化した。
政府は同日、2025年の財政健全化目標を維持するため、総額313億レアル(約9,600億円)にのぼる歳出の抑制を実施すると発表。内訳は207億レアルの予算執行の凍結と、106億レアルの支出ブロックとなっている。財務省と計画省が共同で発表した報告書によると、こうした措置がなければ2025年の基礎的財政収支は517億レアルの赤字に陥ると試算されていた。
午後にはこの歳出抑制策に対する市場の評価が改善し、株価指数も一時的に上昇したが、引け後にIOF税の引き上げ内容が公表されると、市場の楽観ムードは一変した。
政府はIOF税の引き上げにより、2025年に205億レアル、2026年には410億レアルの追加税収を見込んでいる。対象は主に法人向け融資、外国為替取引、外国送金、民間年金(VGBL)などで、クレジットカードやデビットカードによる国外利用にも一律3.5%の課税が適用される見通しとなった。
さらに、法人向け融資では現行の年1.88%から年3.95%へ、簡易課税制度(Simples)適用企業では0.88%から1.95%への引き上げが予定されている。また、VGBLに関しては、これまで非課税だった月5万レアル超の積立に対し、今後は5%のIOF課税が適用される。
これらの増税措置は規制税にあたり、議会の承認を必要とせず、大統領令によって即日施行可能であるため、市場の警戒感が一段と強まった。
アナリストらは、IOF税の引き上げが短期的には税収増に寄与する一方で、信用市場への悪影響や景気の冷え込みを招く可能性があると指摘する。Ouro Preto Investimentosのシドニー・リマ氏は「構造的な歳出改革を伴わない増税は、財政責任への本気度を疑わせ、将来の政策執行力への信頼を損なう」と述べた。
将来の政策金利の指標とされるDI先物金利も上昇した。2026年1月限は14.75%から14.77%へ、2027年1月限は14.05%から14.12%に、2029年1月限は13.66%から13.72%にそれぞれ上昇して取引を終えた。
市場関係者の間では「短期的な税収対策よりも、長期的な財政健全化への本気度が求められている」との声も多い。Ancord(全国証券仲介業協会)顧問のパブロ・スピエル氏は「一時しのぎの増税では市場の信認は得られない」と厳しい見方を示した。
個別銘柄の動き
ペトロブラスの優先株(PETR4)は1.32%安、普通株(PETR3)も1.33%下落した。原油価格の下落を受けた売りが優勢だった。ブレント原油は前日比0.72%安で取引を終えた。エネルギー関連ではBRAVA(BRAV3)が2.47%安、PRIO(PRIO3)が1.94%安となった一方、PetroRecôncavo(RECV3)は0.28%高で引けた。
鉄鉱石大手ヴァーレ(VALE3)は0.75%安。中国の大連商品取引所で鉄鉱石先物が小幅高(0.14%高)で取引を終えたものの、相場の方向感に乏しかった。
金融株はまちまちの展開。イタウ・ウニバンコ(ITUB4)は0.69%安、サンタンデール・ブラジル(SANB11)は0.8%安、バンコ・ド・ブラジル(BBAS3)は0.83%安となった。一方、ブラデスコ(BBDC4)は0.26%高、BTGパクチュアル(BPAC11)は0.2%高と小幅高で推移した。
アズール航空(AZUL4)は4.9%上昇し、6営業日ぶりの反発。過去6日間で株価は約29%下落しており、前日は過去最安値となる1レアルまで売られる場面もあった。業績悪化が懸念されていたが、この日は買い戻しが優勢となった。業界大手ゴル航空(GOLL4)も4.35%高と大きく上昇。米国で進めていた連邦破産法適用からの脱却が近いとの報道も支援材料となった。
再生可能エネルギー事業を手がけるライゼン(RAIZ4)は12.36%高と急伸。前日に投資ファンドPátriaが太陽光発電プロジェクトに関する新たな出資案件を公正取引委員会(CADE)に届け出たことが明らかになり、買いが集まった。
食肉大手JBS(JBSS3)は0.43%高で取引を終えた。翌日に予定されている臨時株主総会では、ブラジルと米国での二重上場を巡る議案が審議される予定で、株主間では意見が割れている。
一方、通信大手TIM Brasil(TIMS3)は2.45%安。証券会社XPが同社株の投資判断を「中立」に引き下げたことが響いた。格安プラン中心の事業構成に加え、インフレ圧力が収益安定性への懸念を強めた。
また、道路運営のモチーバ(MOTV3)は0.6%安。マットグロッソ・ド・スル州のBR-163号線のコンセッション契約が維持されたが、市場の反応は限定的だった。
小売業ではアサイ(ASAI3)が5.46%高と堅調。長期金利の低下を好感する買いが入り、イタウBBAが目標株価を11レアルから12レアルに引き上げたことも材料視された。