
イタリア・ヴェネツィア近郊の歴史ある修道院で若くして院長を務めていたブラジル出身のアリーニ・ペレイラ・ガマッキ修道女(36歳)が、「容姿や国籍、性別を理由に不当に職を追われた」としてバチカンに異議を申し立てている。フランシスコ教皇の死から新教皇レオ14世の選出までの間、彼女をめぐる騒動は国際的な注目を集めた。
アリーニ修道女はアマパー州出身で経営学を学んだ後、宗教の道へと進み、教会機密文書の翻訳や国際イベントの通訳などを務めてきた。2018年、33歳でイタリア最年少の修道院長に任命され、約20人の修道女とともに修道院を地域に開かれた施設へと変革していた。DV被害者支援、障害者のための菜園づくり、ブドウ栽培など幅広い社会活動を展開した。
しかし2年前、バチカンに届いた匿名の手紙が事態を一変させた。彼女の態度が横柄で資金の透明性に問題があると告発され、教会側は監査を開始。初回調査では問題なしとされたが、その後の再調査で立場が危うくなる。彼女は、修道会長のマウロ・ジュゼッペ・レポリ修道士から「美しすぎて修道女には向かない」と冗談まじりに侮辱されていたと明かし、再調査の背景に彼の影があると示唆する。
2024年、教皇が病床にある中で彼女は突然、修道院長の職を解任され、後任として81歳の女性が赴任した。アリーニ修道女は別の共同体での「心理的成熟」を求められたが、理由の説明や正式な審理がないとしてこれを拒否。翌日には彼女に賛同する5人の修道女が精神的圧迫に耐えきれず、身一つで警察に保護を求める事態に発展。最終的に22人中11人が修道院を離れた。
この騒動はイタリアの主要メディアで「美しすぎて院長になれない?」とセンセーショナルに報じられ、ドイツでは映画化の計画まで進んでいる。修道女マリア・パオラ・ダル・ゾット氏は「中世のような迫害だ」と元院長を擁護。一方、レポリ修道士は「元院長はメディア操作で権力を取り戻そうとしている」と反論している。
アリーニ修道女は現在、姉の住むミラノに身を寄せ、教皇選出の週にはバチカンの最高裁に正式な訴えを提出。「若くて女性で、しかもブラジル人であることが不利に働いた」と主張し、教会内部の性差別を告発する。支援者は彼女と修道女たちのために新たな邸宅を提供し、彼女は新たな社会活動の拠点とする考えだ。
アリーニ修道女は「祈りと奉仕をやめない」とし、新教皇レオ14世の選出に希望を抱く。「法を理解し、人権を重んじる方です。私が求めているのは法のもとでの正義なのです」と語り、信仰への誓いと正義への訴えを両立させながら、新たな一歩を踏み出している。(1)