週明けのブラジル株式市場は、世界的なリスク選好の流れに乗りつつも、慎重な展開となった。主要株価指数Ibovespaは終日方向感を欠きながら推移し、最終的に前営業日比0.04%高の13万6,563.18ポイントで取引を終えた。上昇幅は51.30ポイントと小幅にとどまった。一方、為替市場ではドルが対レアルで上昇し、終値は0.43%高の1ドル=5.679レアルとなった。金利先物(DI)も全般的に上昇し、利回りカーブ全体が持ち上がった。
一方、米国市場では、主要株価指数が軒並み大幅高となった。背景には、米中両国が予想以上の速さで一時的な関税合意に達したことがある。両国は、関税の応酬を緩和することで合意し、5月14日から90日間、互いに残存する34%の関税のうち24ポイント分を停止する方針を発表した。
ブラジルのInsper大学で中国経済を専門とするロベルト・ドゥマス教授は「ついに“大人たち”が交渉の場に現れた」と述べ、「トランプ前大統領による大きな譲歩であり、これから新たな通商政策が議論されるだろう」と評価した。
米関税は「底打ち」か
ただし、関税緩和の余地は限定的との見方もある。米財務長官のスコット・ベセント氏は、「今回の合意後、さらなる関税引き下げは現実的ではない」と述べ、今回合意された関税水準――対中10%、対米30%(フェンタニル関連製品には追加20%)――が「実質的な下限」であると強調した。「今や、中国は報復を行わなかった他国と同水準にある」との見解を示し、トランプ氏も「関税が再び145%に戻ることはない」と明言した。
XPインベストメントのストラテジスト、ラファエル・フィゲレド氏(通称ラフィ)は「今回の合意はスピード感が際立っていた」と評価。「急速な進展の背景には、関税の応酬では双方が損をするとの危機感があったはずで、すでに輸入統計にはその影響が明確に表れている」と指摘した。
この米中接近により、トランプ氏が中国の習近平国家主席との直接対話に意欲を示すなど、両国関係の修復が進む兆しも見られる。加えて、米連邦準備理事会(FRB)による今後の金融政策にも変化が及ぶとの観測から、市場では利下げ期待がやや後退している。
なお、中国を訪問中のルーラ大統領は「ブラジルと中国の関係は壊れることはない」と述べ、両国の結びつきの強さを強調した。
国内ではHaddad発言が注目に
国内では、フェルナンド・ハダジ財務相が同日朝のインタビューで「現在の政権が終了するまでに、ブラジル経済は年平均3%の成長を達成する可能性がある」との見通しを示したことが関心を集めた。
また、大統領代行を務めるジェラウド・アルキミン副大統領も、インフレ要因を取り巻く「環境の改善」を指摘し、記録的な穀物収穫(スーパーサフラ)と為替の落ち着きがインフレ抑制に寄与しているとの見方を示した。
ValeとPetrobrasが指数を下支え
とはいえ、Ibovespaの動きに最も大きな影響を与えたのはやはり米中合意とコモディティ価格の上昇だった。鉄鉱石価格の上昇を受けて、資源大手ヴァーレ(VALE3)が日中安値圏で2.51%上昇。石油大手ペトロブラス(PETR3)も国際原油価格の上昇に加え、本日発表予定の2025年第1四半期決算への期待感から、同じく日中安値圏で2.39%の上昇を記録した。
中小石油会社も好調で、PRIO(PRIO3)は5.15%上昇した。石油・ガス業界全体に対する投資家の期待が広がっている。
一方、石油化学大手ブラスケン(BRKM5)は、前四半期比で業績が改善したことを背景に6.05%上昇。世界的な商業摩擦が同社に与える影響は限定的と受け止められた。
しかしながら、銀行株の軟調が指数の上値を抑えた。イタウ・ウニバンコ(ITUB4)が2.01%下落するなど、大手行が一斉に1%以上の下落を記録した。食品関連銘柄も明暗が分かれ、ミネルヴァ(BEEF3)は2.22%上昇した一方、JBS(JBSS3)は1.11%下落した。
また、電力会社コペル(CPLE6)は、新たな資本政策と配当方針の導入にもかかわらず、2.78%下落した。同社は年2回以上の配当実施と、透明性の高い資本戦略の採用を発表したが、市場の反応は限定的だった。
注目はCopom議事要旨と米CPIへ
火曜日には、ブラジル中銀金融政策決定会合(Copom)の議事要旨と、米国の4月消費者物価指数(CPI)が公表される予定。特にCPIは、トランプ政権下での政策が米国経済の実体にどのような影響を及ぼしたかを占う手がかりとなる可能性がある。波乱の週の幕開けに、投資家の体力が試される展開となりそうだ。