
12日付ヴァロール紙「米中合意がブラジルに与える二つの影響」記事(1)によると、アメリカと中国が合意した一時的な関税引き下げ措置は、ブラジルに対して二重の影響をもたらすこととなった。合意内容は、アメリカが中国製品に対して課していた関税を145%から30%へ、中国はアメリカ製品に対して125%から10%へと引き下げるものだ。
この措置により、まずブラジルには「安価な中国製品が津波のように押し寄せるリスク」は軽減されることになった。トランプ前政権による高関税措置時には、中国製品がアメリカ市場に入りにくくなり、その過剰分がブラジルに流入して国内市場を圧迫するとの懸念が広がっていたからである。
しかし、同時にブラジルが米国市場において中国の穴を埋める形で輸出を拡大するチャンスは減少した。繊維業界では、特にこの影響が顕著に表れている。
昨年のデータによれば、ブラジルの対米繊維輸出額は6800万ドルにとどまり、アメリカの繊維輸入総額1130億ドルの中で微々たるものだった。だが、米中摩擦の激化を受けてブラジル製品への関心が高まり、実際にブラジル企業への問い合わせも増加していた。ブラジル繊維業界協会(Abit)のピメンテル専務理事は、中国製品の流入リスクを引き続き注視する姿勢を示す一方で、米中合意により市場拡大の可能性が後退したと指摘している。
同紙別記事「ブラジルは米中合意の影響を受ける可能性があるとクラバー・カローン氏」(2)によると、トランプ政権の中南米特使であるマウリシオ・クレイバー・カローン氏もまた、米中交渉がブラジルに影響を与える可能性が高いと述べている。特に、中国がアメリカ産農産物(大豆・トウモロコシ・肉類など)の輸入を再開することで、ブラジル産農産物の輸出競争力が損なわれる恐れがあるという。
同氏は、ブラジルと中国の経済関係は「ゼロサムゲーム」であるとし、ブラジルはアメリカとの商業および投資関係を優先すべきだと主張した。さらに、アメリカはブラジルにとって最大の直接投資国であり、その投資残高とフローの両方において他国を上回っているとも指摘した。
この発言を受け、ブラジル財務省のドゥリガン副大臣も「アメリカとの貿易赤字を考慮すべきだ」と訴え、自国の利益を最優先にする姿勢を強調した。中国との関係では、電気自動車産業への進出を例に、単なる輸出ではなく、国内への技術移転と投資が重要だとの見解も示されている。
今回の米中合意は、ブラジルにとって「中国製品の流入リスク低下」と「輸出拡大機会の減少」という両面の影響をもたらしており、今後の通商戦略において慎重な対応が求められている。