
8日付CNN(1)によると、ルーラ大統領は、近年の急速な米中対立に対し、「第二の冷戦は受け入れない」と明言し、多極的な国際秩序の構築に向けて中国との連携を一層強める姿勢を示した。これは、米誌「ザ・ニューヨーカー」のインタビューで語られたもので、大統領は「神のおかげで中国がある」と述べ、中国の技術的進展と国際的役割に強い肯定を示した。
ルーラ大統領は「中国はAIなどの分野で世界的競争力を持ち、我々にとって米国以外の代替手段を提供している」と指摘。さらに「中国がグローバル市場で存在感を強めることに西側諸国が敵意を抱くのは不合理である」と批判。1980年代にグローバル化を推進した米英の指導者、レーガンやサッチャーを引き合いに出し、「彼らが称賛した自由貿易が中国には拒絶されている」と皮肉った。
6日付アジェンシア・ブラジル(2)によると、こうした外交姿勢は実際の訪問外交にも如実に表れている。5月8~10日にロシアを訪問したルーラ大統領は、プーチン大統領と会談し、第2次世界大戦終結80周年記念式典にも出席。さらに12~13日には中国・北京での「中国–CELACフォーラム」に参加し、習近平国家主席と16の二国間協定に署名する予定だ。
この協定にはインフラ整備、エネルギー転換、科学技術協力、金融、貿易の多角化などが含まれ、ブラジル側は「中国との関係は米国との関係に敵対するものではなく、補完的である」と強調している。
7日付ブラジル・デ・ファット(3)によると、エドゥアルド・パエス・サボイア外務省アジア・太平洋局長によれば、さらに32の合意文書が交渉中で、経済連携の深化が期待されている。
中国–CELACフォーラムは、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)と中国との閣僚級対話の枠組みで、今年で設立10周年を迎える。今回の北京会議にはルーラ大統領のほか、チリのボリッチ大統領、コロンビアのペトロ大統領(CELAC暫定議長国)も出席予定であり、フォーラム冒頭では習近平主席と各国首脳による基調演説が行われる予定。
注目すべきは、ルーラ大統領がCELACの「トロイカ」(前・現・次期議長国)に属していないにもかかわらず、習主席から直接招待された点だ。ジゼラ・パドヴァン中南米・カリブ局長は「ルーラ大統領の提案力と外交的責任感が中国側から高く評価された結果」と述べた。
一方、ルーラ大統領はロシア訪問時にプーチン大統領と科学技術分野の協定にも署名し、肥料やディーゼルの供給確保、赤字解消を目指すと述べた。ロシアと蜜月関係を見せつつも、ウクライナ侵攻については「領土保全と平和的解決の原則を支持する」と中立的立場を維持していると言い張った。
今回の一連の外交日程には、南米代表として国際舞台での存在感を高める意図があるとみられる。米中が技術と影響力を競う時代において、どちらとも良い距離を保つという多極的アプローチは、今後のグローバル政治におけるブラジルの立ち位置を形作る鍵となるだろう。