【2日の市況】カルロス・ルピ社会保障相が辞任、不正年金問題で引責=イボベスパ指数は0.05%高の13万5,133.88ポイント

 週末を前に、ブラジルの株式市場は小幅ながらも上昇して取引を終えた。5月2日(木)にイボベスパ指数は0.05%高の13万5,133.88ポイントで取引を終え、66.91ポイントの上昇となった。取引最終盤のオークションでの値動きが反映された結果であり、週間ベースでは0.29%の上昇となり、これで4週連続のプラス圏となった。一方、将来金利を示すDI(デリバティブ・インデックス)はまちまちの動きとなった。

 米国では明るい材料が相次ぎ、主要株価指数が1%以上の大幅上昇を記録。ニューヨークの金融街では投資家たちが高揚感に包まれて週末を迎えている。

米中貿易摩擦に緩和の兆し

 市場を後押しした主な要因の一つは、米中間の貿易摩擦が若干和らいだとの観測である。中国政府は米国からの一部製品に対する関税を静かに免除し、約400億ドル規模の輸入品が対象となった模様だ。これは国内経済への打撃を緩和しようとする措置と見られており、米国からの新たな交渉提案も検討されているという。
 また、メキシコやカナダも米国との通商交渉で前向きな姿勢を示しており、通商面での地政学的緊張が一部後退したことが投資家心理を支えた。

雇用統計が示す米景気の底堅さ

 米国労働省が発表した4月の雇用統計(ペイロール)によると、非農業部門の雇用者数は前月比17万7,000人増と、3月の18万5,000人増(修正後)からは減少したが、市場の悲観的な予想を覆す内容だった。失業率は4.2%で安定しており、労働市場の逼迫は依然として続いていると見られる。
 エクウス・キャピタルのパートナーであるフェリペ・ウチダ氏は「企業は景況感の悪化や貿易リスクにもかかわらず、解雇に慎重な姿勢を保っている。FRB(連邦準備制度理事会)は性急に利下げに踏み切る必要がなくなった」と指摘する。

欧州市場も好感

 欧州でも4月のインフレ率と失業率が安定し、米中関係の改善期待と相まって株式市場は上昇した。

国内では銀行株が足かせに

 しかし、ブラジル市場にはこの楽観ムードが波及しきれなかった。主力の銀行株が軒並み1%以上の下落となり、特にブラデスコ(BBDC4)は2.11%下落。食肉大手JBS(JBSS3)も1.45%下げ、指数を圧迫した。
 一方で、鉱業大手ヴァーレ(VALE3)は取引中に激しく上下し、終値は0.11%の小幅安で終えた。国営石油会社ペトロブラス(PETR4)は原油価格の下落にもかかわらず2.73%高と大きく上昇した。
 中堅石油会社であるPRIO(旧PetroRio、PRIO3)は、ペレグリーノ油田の大型買収を受けて8.07%の大幅高となり、市場の注目を集めた。
 来週は5営業日すべて稼働する通常週に戻る。注目は5月8日(水)の米・ブラジル両国の金融政策決定会合(通称:スーパー水曜日)だ。同日にはブラジルの3月鉱工業生産も発表され、さらに10日(金)には4月のインフレ指標IPCAが公表される予定である。

ドルは5.65レアルに下落、米雇用統計と米中協議に期待

 外国為替市場では、米中貿易協議の進展期待と米雇用統計の堅調な結果を受け、ドルは世界的に下落。ブラジルでもこの日、現物ドルは0.36%安の5.6561レアルで引け、今週(労働の日の祝日を含む短縮週)では0.60%の下落となった。
 また、B3(ブラジル証券取引所)では6月限のドル先物が0.23%安の5.6910レアルとなり、今後のドル安継続への期待も残された。

カルロス・ルピ社会保障相が辞任、不正年金問題で引責

 一方、政界ではカルロス・ルピ社会保障相が5月2日(金)に辞任を表明した。INSS(国立社会保障院)を巡る年金・遺族年金の不正受給スキャンダルが表面化し、党内外からの辞任圧力が強まっていた。
 ルピ氏はSNSで「ルーラ大統領に本日午後、社会保障相の職を辞する意向を伝えた。信頼と機会に感謝している」と投稿。連邦政府と与党PDT(民主労働党)は、水面下での調整を経て、後任として同党のウォルネイ・ケイロス前下院議員を指名することで合意した。
 ケイロス氏は現在、同省のナンバー2である事務次官を務めており、長年の政界経験と党内での信頼が評価されている。正式な任命は同日中に官報にて公布される予定。
 ルピ氏の辞任の背景には、2019年から2024年の間に最大63億レアル(約1,900億円)の損失をもたらしたとされる、INSS提携団体による高齢者への不正割引問題がある。さらに前政権からの人員をそのまま維持していたことも、ルーラ政権の刷新方針と相容れず、辞任は不可避と見られていた。

政界の再編も視野に

 ルピ氏はPDT党首を休職して大臣職にあったが、今後は党内の再編や政権与党との連携強化に向けて中心的な役割を担うとされる。
 なお、今回の辞任劇はPDT内の分裂も浮き彫りにした。シロ・ゴメス前大統領候補に近い急進派は政権との決別を主張する一方で、現実路線を取る穏健派は、政権内での影響力維持を重視しており、党内の今後の動向にも注目が集まっている。

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