Brasil Nippou Gourmet Banzai!!=移民が受け継いだ本場の味=スペイン料理店「PEPE」

特製パエリアとマリアさん

 スペイン料理を高価なものと思っている人は多いのではないだろうか。サンパウロ市イピランガ区のスペイン料理店「PEPE」は、高品質でありながらも庶民的な価格でスペイン料理が楽しめるとして人気を博している。
 コラム子が取材に訪れた正午頃、店長のマリア・デル・ピラールさんはちょうどパエリアを仕上げているところだった。
 調理をひと段落させ、明るい笑顔で迎え入れてくれるマリアさん。その人柄もあってか店内はとてもアットホームな雰囲気。内装にはスペインタイルをモチーフにしたテーブルを用いるなど、こだわりを感じさせる。
 「PEPE」で提供されるパエリアは、マリアさんの父でスペイン移民のペペさんが週末に家族や友人たちに作っていたレシピがもとになっている。

ペペさんから受け継がれた自慢のパエリア

 パエリアはスペインの伝統的な家庭料理だ。ペペさんは目玉焼きもろくに焼けなかったが、唯一パエリアは得意だったそうだ。
 スペインでパエリアは、ブラジルのシュラスコ同様、男性が週末に作るものという文化が強く根付いている。家族全員で準備を手伝うが、鍋の前に立つのはペペさんだけ。
 ペペさんが他界した際には、一家伝統の味が失われてしまうと親族らは悲しんだが、マリアさんの夫・フェルナンドさんが「私が作る」と立ち上がった。
 フェルナンドさんはイタリア系だが、ペペさんのパエリアを初めて口にした瞬間から、海鮮の風味豊かな味わいに魅了されてしまっていた。ペペさんの横で長年にわたってパエリアづくりを手伝ってきたことが功を奏し、見事にその味を再現させ、家族公認で継承を果たした。
 かつてフェルナンドさんはペペさんに、レストランを開こうと提案したこともあったが、マリアさんが「家庭料理のパエリアで商売ができるはずない」と反対した。
 しかし、サンパウロでパエリアが豪華料理として扱われていることを知るにつけ、「私たちの受け継いだ家庭的な本当のパエリアを届けたい」と思うようになり、開業を決意した。
 イベントなどでパエリア提供を始め、99年に同店の創業に至った。
 同店の敷地はもともとフェルナンドさんの父が経営する銅鋳造場だった。銅鋳造は1920年から行われ、イピランガ博物館のモニュメントに使用されている銅飾りやジュセリーノ・クビシェッキの銅像なども製作したという。経営者の父が他界した後、土地は親族らが居住用などに使用していたが、マリアさん夫婦が同店を開くにあたって譲り受けた。
 惜しくもフェルナンドさんは昨年、52歳の若さで他界してしまったが、伝統のパエリアの味はマリアさんが受け継いでいる。

手前に前菜のカタランソースとトースト、ジャモンハム左奥にパステル、右奥にジャモンコロッケ

 そんな創業秘話を聞いていると、テーブルには前菜の「エビとクリームのパステル」、「カタランソーストースト」、「ジャモンコロッケ」、「ジャモンハム」が並べられていた。
 エビとクリームのパステルは、新鮮でプリプリなエビがココナッツミルクと生クリームを使った濃厚なクリームソースと合わさった逸品。マリアさんは「素朴な料理」と言うが、どの前菜も高品質だ。
 ほどなくして、マリアさんが手掛けた注目のパエリアも登場。海鮮出汁を存分に吸い込んだ米は、見事に炊き上がり、鶏肉や野菜の旨味もしっかりと詰まっていた。
 同店では平日の昼限定で、前菜2品とパエリアを59レで提供している。
 「エビやムール貝はフォークなんかじゃなくて手で食べるものよ!」とマリアさん。「これが本場スペインの味か」と脳内でスペインの港風を感じていると、会ったことのないペペさんの姿まで想像できる気がした。

暑い日にピッタリのサングリア・デル・ペペ

 この日は暑かったため、スペインで親しまれている赤ワインのフレーバーカクテル「サングリア」も注文することに。同店ではオリジナルサングリア「デル・ペペ」(400mlグラス29レアル/1L65レ)が人気だ。赤ワインに漬けた果物とライチリキュールの甘さがちょうどいい具合に調和していて、暑い日にはぴったりだ。
 締めのデザートに「クレーマ・カタラナ(24レ)」と「チュロス・エン・ローダ(26レ)」を食す。クレーマはひんやりとしたクリームをカリカリのキャラメルでコーティングしたデザート。濃厚なクリームと甘くほろ苦いキャラメルが良くあわさっている。チュロスも甘さ控えめ、シナモンの香りがよく効いており、サクサクとした触感とともに食べるアイスは抜群の相性だった。

スペイン料理店「PEPE」の外観

 夜にはフラメンコダンスの披露も行われているそうで、昼間のアットホームな雰囲気とはまたすこし違った魅力が味わえる。
 店内座席は180席ほど。予約すれば貸し切り可能だ。ユニセックス・障害者用トイレなどアクセシビリティ対応も施されている。
 スペイン移民が受け継いだ本場の味を楽しみに訪れてみてはいかがだろうか。

 【スペイン料理店「PEPE」店舗情報】
営業時間:
火~金曜日正午~午後4時、午後7時~午後11時
土~日曜日正午~午後5時、午後7時~午後11時
住所:
R. Bom Pastor, 1660 – Ipiranga
電話:(11)3798―7616
WhatsApp:95219-0265
サイト: https://www.paellaspepe.com.br/

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