連載小説=自分史「たんぽぽ」=黒木 慧=第127話

・美佐子、五年ぶりに八回目の訪日。天理教団参で石井みゆきさん達と一緒である。旅の目的は他に五月三日に母、政子の十三回忌法要と伝松の法要も兼ねての参加であり、また、中学、高校の同窓会への出席である。それに、前回訪日時に起きた姉亮子の意識不明の見舞いなど、結構忙しい日程である。在日中の末娘絵理子も色々と気を使っているようだ。何とかいい思い出の旅であってほしい。
 留守番役の私は〈奥さんが居なくてさみしいでしょう〉と皆になぐさめられるけど、一人になってみると、やはり今までとはサイクルが変わって来て、何かと戸惑う事が多い。ちょうどプロスタタの療養中なので、その事に気持が向くので、それで淋しさをまぎらわしている。幸い、るり子と恵美がサンパウロに居て、心配してくれるので、心強い。サンパウロまで家から六〇キロ通うのは大変なので、治療の期間は車を恵美のアパートのガレージに置いて、るり子のアパートに泊まっている。治療時間は午後二時から三時頃までなので、その他の時間は県人会の事務所で暇つぶしをしている。
・五月二日 私達と白旗ご夫妻の仲人の井上康夫君(六十才)がガンで亡くなった。
・麻生首相の歓迎会が文協で行われた。千葉県人会館落成祝いに参加。
・五月十日 美佐子は一ヶ月ぶりに日本から帰伯した。皆と会えて大歓迎を受けて最高の思い出の旅だったと感激している。今から時差ぼけが解けたら、皆にお礼の手紙を書くのだと張り切っている。
・五月二十一日 プロスタタの治療が終わった。やれやれとやっと我が家でくつろげると一安心。まだ結果は解らない。今から三十五日目ごろにPSAの血液検査をして、四十五日目ごろにドクター・ドウグラスに診てもらう事になっている。何とかラジオテラピア療法が効き目があってほしい。
・五月二十二日 一ヶ月前の四月二十一日に私達の母県宮崎の都農町で牛、豚の口蹄疫が発生し急激な広まりをみせ、県内はその防疫にてんやわんやである。NHK衛星放送も時間単位でこのニュースを流している。東国原知事も先頭に立って防疫服で頑張っている。日本各地から義援金が送られている。
 私達ブラジル宮崎県人会からは四十七都道府県人会長の激励署名を宮崎へ送り、そこで募金を県人主体に呼びかけ中である。

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