連載小説=自分史「たんぽぽ」=黒木 慧=第121話

・十一月三日 日本では福田康夫首相の突然の辞任で、そのあと福岡出身の麻生太郎首相が誕生した。
 アメリカでもブッシュ大統領から来年は黒人のオバマ大統領に引き継がれる。アメリカのブッシュ政権の失策で起きた色々な難題を、オバマ新政権はどのように解決していくか。イスラム世界のテロとの戦い、七年に及ぶイラク戦争も余り良い結果は出ていない。それと今年後半急激に悪化した経済。これもアメリカ発の経済政策の失敗に起因している。アメリカも貧乏人向けの住宅ローンが証券化して、金融市場をかけ回り、貧乏人が払えない事からつまづいて空手形となり、世界中の大手銀行までゆさぶる金融恐こうを起こしたのだ。アメリカで金の動きが止まって来れば国民の購買力が落ちる。車の売れ行きも、IT産業も急低下すればアメリカへの輸出に頼っていた国々は輸出不振で生産減となり、失業者が溢れる。特に日本の落ち込みはひどい。ブラジルから日本に出稼ぎに行っている日系人は不正規雇用で一番に首を切られ、放り出されて、住む家もなく、食べるにも困る人がたくさんいる。
 日本政府としてはブラジル人労働者が悪いのではないので、何とかその支援策を講じて、ブラジルに帰れない人には一人二十万~三十万円の旅費を貸し出すことになっているようだ。
 ブラジルもその減速の影響がかなり現れている様であるけれども、日本程ではないようだ。と言う事は日本程アメリカに頼っていないとも言える。ブラジルは資源大国で他国の世話にならなくても自立できる力がある。左翼だと世界から危険視されたルーラ大統領も右翼政策に変わったことが効を奏し、政治も経済も割合安定してきた。それでも、ブラジルは外資の力を借りて成長して来た。その外資が自国防衛のためにブラジルから引き上げたので一時期外資不足になりドルが急騰して、一、七〇レアイス位だったものが急に二・五〇レアイスにまで上昇した。その後、二・三〇レアイス位に落ち着いている。二〇〇九年度はその景気悪化が、底をつく最悪の年になるのではとの見方をする人もいる様だ。我々もそれに対する心構えが必要だろう。
・十二月二十五日 クリスマスは子供達家族皆、我が家に集まって一日を過ごした。

 二〇〇九年(平成二十一年) 丑年  慧七十五才、美佐子七十一才
・一月一日 年越しはサンロッケのみずえの家で合計六人で豚のペルニールを食べて打ち上げ花火の音を聞きながら年越しそばで新年を祝った。そのあと悟の家族は南バイア州のポルト・セグーロに、恵美の家族は北サンパウロの町、モンテ・アズールへ。
・一月十六日 高原の町カンポス・ド・ジョルドンにミゲールとるり子夫妻の招待で二泊旅行。今西老夫婦と私達、それに孫三人。楽しい三日間だった。

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