《記者コラム》ハッキングが生んだ羅針盤や海図のない旅

 12月10日に起きた保健省関連サイトのハッキングは、ワクチンの接種証明発行を不能とし、感染者や死者に関するデータを掲載していたサイトが一時的に姿を消す事態も招いた。復活後もデータは未更新のままだ。
 接種証明の発行停止の影響は国外旅行予定者中心に出たが、州や市の保健局が感染者などのデータを登録できず、正確なデータが出せなくなった事は、感染状況の把握や予測を難しくした。
 ワクチン接種進展に伴う感染者や死者の減少傾向がオミクロン株出現で変化していないかを推測する事もできず、羅針盤や海図もなく旅行している状態が生じたのだ。
 アジェンシア・ブラジルというサイトが掲載する感染者や死者のデータ(表)は毎日出るとは限らないし、感染率や死亡率、地域別の感染者や死者の数は自分で計算する必要がある。接種の実態も追いかけるのが困難だ。
 12月20、25、26日や1月2日は表がなく、12月19~25日と12月26日~1月1日は週間の感染者や死者の州別数が計算できないし、3日のリオ州の感染者が前日比で4千人増と聞いても、本当に増えた時期がわからない。その点は、昨年9月18日に起きた同州感染者10万人増でも同様だ。
 ハッキング被害後のデータの空白状態は、広域停電などを意味するアパガンという言葉を使って「データのアパガン」と呼ばれる。
 現在はH1N1型やH3N2型のインフルエンザとの同時感染の可能性などもあるからなお、正確なデータが欲しいのに、軽症者のデータはパンデミック初期から把握、登録されておらず、真に正確なデータは望めない。
 この点は、2020年のパンデミック初期に重症急性呼吸器症候群の患者が急増したのに、新型コロナの感染者数は増えなかったミナス州のデータの信憑性への疑問などとも関係している。
 正確な状況把握と正しい措置や対策導入には正しい情報が不可欠だ。だとしたら、データ登録もままならずに生じるデータのアパガンは人の生死さえ左右し得る。4日には「登録作業正常化」という州も増えたが、早急な登録基準統一とシステム、データの回復を望みたい。   (み)

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