
サンパウロ市保健局(SMS)は、予防接種推進プログラム(PMI)および衛生監視調整局(COVISA)を通じて、CPTM(サンパウロ都市圏鉄道)、地下鉄公社(メトロ)、市バス運営会社(SPTrans)、商業施設などと連携し、6月9日(月)より、インフルエンザウイルスに対する予防接種を市内の主要駅やバスターミナルなどの人通りの多い場所で実施している。
この取り組みは、今年まだ接種を受けていない市民、特に基礎保健施設(UBS)に足を運ぶ時間のない人々に向けて、より身近な場所で接種の機会を提供することを目的としている。3月から始まった今期の接種では、既に200万人以上が接種を終えているが、優先対象となる高齢者や基礎疾患を持つ人々の中には、いまだ接種を受けていない人も多く、深刻な課題となっている。
高齢者の死亡率に警鐘
特に注目すべきは、高齢者におけるインフルエンザの重症化および死亡リスクの高さだ。サンパウロ市の保健当局によると、インフルエンザによる入院や死亡の大半は60歳以上の高齢者が占めており、ワクチン未接種者の割合が高いことが背景にある。2024年のデータによれば、市内で報告されたインフルエンザ関連死のうち、約80%が高齢者層に集中しており、ワクチン接種が命を守る重要な手段であることがあらためて浮き彫りとなっている。
市保健局は「移動が困難な高齢者にとって、普段利用する駅やバスターミナルでの接種は、大きな利便性となる」とし、今回の取り組みを特に高齢者層への呼びかけと位置づけている。
接種は平日のみ、午前8時半から午後5時まで(一部会場では9時~16時)行われ、週末および祝日は実施されない。接種には本人確認書類が必要で、可能であれば予防接種手帳の持参が推奨されている。ワクチンは、2024年5月19日以降、生後6カ月以上のすべての市民に無料で提供されている。
接種実施場所
接種会場には、以下のような交通拠点やショッピングセンターが含まれる。
【メトロ】ピニェイロス駅、ヴィラ・プルデンチ駅
【CPTM駅】ルス駅、エンジェニェイロ・グラウ、イタイン・パウリスタ、サンミゲル、ピリトゥーバ、ペルース、コリンチャンス・イタケラ駅
【バスターミナル】カショエリーニャ、カペリーニャ、ジョアン・ジアス、サントアマーロ、サコマン、チエテ長距離バスターミナルなど計12カ所
【商業施設】ショッピング・ブタンタン
保健当局の見解と背景

市保健局の担当者によれば「駅やバスターミナルなどの公共スペースでワクチンを提供することにより、市民の接種率を効果的に高めることができる」としており、今回の施策は6月9日の「全国予防接種の日」に合わせて開始された象徴的な取り組みでもある。
市のデータによれば、6月初旬までに優先対象者のうちおよそ37・5%しか接種を完了しておらず、さらなる普及が課題となっている。対象となる優先グループには、60歳以上の高齢者、6歳未満の子ども、妊婦などが含まれる。
コロナ・ワクチン接種との連携
市はインフルエンザだけでなく、新型コロナウイルス(COVID-19)の追加接種も推奨中だ。
【6カ月~4歳11カ月29日までの小児】初回接種または強化接種として、モデルナ社製のモノバレントワクチン(JN1)もしくはファイザー社製XBB株(紫キャップ)を2~3回接種
【60歳以上の高齢者:6カ月ごとに1回の接種が推奨】
◎妊婦:妊娠中に1回の接種を毎回実施
◎基礎疾患のある人、医療従事者、矯正施設関係者、路上生活者などの特別グループ:年1回または6カ月ごとの接種を推奨。ワクチンはモデルナ(Spikevax JN1)、ファイザー(XBB・灰色キャップ)、Serum、Zalika社製など、年齢や体調に応じて適切な製品が用意されている。
通常の医療施設でも接種可能
これらの臨時接種会場のほか、サンパウロ市内のすべてのUBS(基礎保健施設)では平日7時~19時、また毎週土曜日にはAMA/UBS統合施設でも接種が可能。
サンパウロ市当局は「市民の皆様には、感染症の流行を抑えるためにも、早めの予防接種をお願いします」と呼びかけている。