
「ファーラ、ブラシレーロ!(やあ、ブラジル人!)」──独特の中国訛りと俗語を交えたポルトガル語を武器に、ユーモアたっぷりに商品を紹介する中国人インフルエンサーたちが、いま、サンパウロ市の主要商業地区にて顕著な人気を博している。彼らはSNSを駆使した効果的なプロモーションにより、輸入雑貨の実店舗への集客増加と売上の飛躍的拡大を実現している。こうした動きは単なる販売促進にとどまらず、ブラジル人と中国系移民との文化的接点を可視化し、異文化理解の促進にも寄与していると6日付エスタード紙(1)が報じた。
この動きをリードするのは、サンパウロ市セントロのブラス地区にある大型ショッピングモール「Busca Busca」の動画配信者、アレックス・イェ氏(37歳)だ。イェ氏は10歳で中国からブラジルに移住。特徴的な中国訛りを交えたポルトガル語と親しみやすさを武器に、家庭用品や電子機器、雑貨を紹介する動画を配信中。自身のインスタグラムは1219万人超のフォロワー数を誇る。
23年3月に小規模店舗として始まったBusca Buscaは、イェ氏の動画による人気の高まりで集客力を急速に強化。わずか1年で6階建ての大型店舗へと拡大し、週末には長蛇の列ができるなど、実店舗の売上に多大な貢献を果たしている。店舗はショッピングモール全体をイェ氏が借り受け、輸入業者に貸し出す形態を取る。複数の輸入業者がブランド力と認知度の向上を図りつつ、動画配信と店舗経営を連動させた新たなビジネスモデルを築いている。
この一連の流れは、22年に実業家パウロ・リー氏が家族経営の輸入業者「PLB」の知名度向上を目的にSNSを活用したことから始まった。彼は動画制作をルーカス・ペレイラ氏に依頼し、10カ月で10万人のフォロワーを獲得。PLBの売上は30%増加し、地元の中華料理チェーンなどから広告出演依頼が寄せられるまでに成長した。PLBの動画は、中国系移民の独特な話し方や文化の違いをユーモラスに伝え、移民に対する偏見の緩和にも一役買っている。
SNS動画は、中国訛りとブラジルの地域訛りを織り交ぜた話し方が親近感を生み出し、外国人でありながら流暢なポルトガル語を駆使し、日常生活に溶け込もうとする姿勢が視聴者に強く響いている。専門家は「言語や文化の違いを面白おかしく伝えることで、視聴者が移民の人間性に共感し、彼らの存在が身近に感じられるようになっている」と指摘。
この成功モデルはサンパウロ市にとどまらず、地方都市にも波及している。北東部セアラ州ソブラルでは中国人リン・イーフイ氏とブラジル人マイコン・ソウザ氏のインフルエンサーコンビが、北東部の方言と中国訛りを巧みに使ったユーモア動画を配信。リン氏はもともと中国で蟹漁師をしていたが12年前にブラジルへ移住し、サンパウロ市で輸入業者の下で働いた後、ソブラルで自身の輸入店を開いた。彼らは23年10月から動画活動を開始し、互いの言葉の違いや文化のズレを笑いに変えた掛け合いで人気を博している。
彼らのインスタグラムのフォロワー数はそれぞれ77万人、51万2千人に達し、実店舗の売上も40%増加。マイコン氏は「街を歩けば写真撮影を求められるほど地元に溶け込み、影響力を持つ存在となった」と語る。彼らの活動は地方における中国系移民コミュニティ活性化と、ブラジル社会における多文化共生の象徴的事例とされている。
中国系移民のインフルエンサーたちは、言語と文化のギャップをユーモアと親しみやすさで埋めることで、新たな商業モデルと異文化交流の場を創出すると同時に、両国民の相互理解を促進する重要な媒介となっている。