県連ふるさと巡り南大河州編=誕生と終幕、南伯に新胎動=(6)=父の志受け継いでサクラ協会創立

記念碑創設日の記念写真(提供写真)

 南大河州イジュイ市でふるさと巡り一行が見た日本舞踊団「愛歌(あいか)」の裏方には、サクラ協会(ミリアン・スミエ・サイゾ会長)の存在があった。日本の象徴「桜」を名前にもつ同協会は、日本文化の普及と伝承を目的として活動を行っている。
 同協会創設者のマテウス・ミツオ・アサダさん(2世)は「イジュイはドイツ植民地だったから、日系の僕たちにとって所属感を感じる場所がなかった。だから父の長年の夢だった日本人会創設に、僕も取り組んだんだ」と創設への思いを語った。
 創立のアイデアは2018年に出され、翌19年に創設された。なんと日本移民110周年に生まれた新日系団体だ。当時地域の日系家庭に呼びかけを行い、約15家庭が応じて集結した。「多くの一世の方は気力があまり残っていなかったので関心が薄く、若い世代もほとんどがデカセギで日本へ渡ってしまった。だから人が集まらなかった」と当時の様子を振り返る。
 同市には87年、16の日系家庭があったとされている。少人数だったことから団結を求める声は少なかった。そんな当時、日本人会創設に熱心に取り組んでいたのがマテウスさんの父だった。そして約30年後に息子が実際に創設を果たした。
 マテウスさんはドイツ植民地であるイジュイ市で居場所がないと感じ、日本で6年間就労した際も「ブラジル人」として周りから認識され、日系人としての自分の居場所が得られなかった。それなら自分で居場所を作ろうと、イジュイ市に戻って会創設に励んだ。
 マテウスさんはサクラ協会創設から2期会長を務めた。一身上の都合から会長職をミリアンさん(2世)に譲って副会長になった。
 イジュイ民族連合(UETI)に属する各会は会館「民族館(Casa étnico)」を持っている。サクラ協会も18年にイジュイ市の協力により民族館建設開始の記念碑が設立された。今年から国家文化支援プログラムの補助金申請を行い、24年に日本民族館の建立開始が予定されている。

 ミリアン会長は日本民族館の建設に対し、同地の「日系人・日本人が長年待ち焦がれた夢」だと話した。同館は日本文化の普及の拠点としてだけでなく、舞踊練習場として用いられるほか、日系人が集う象徴的な場所となる予定だ。
 歓迎会の翌日、一行はイジュイ市内の公園で行われていた青空市(フェイラ)を観光。その一角で、ガウーショ(南伯人)が淹れた本場のマテ茶(Chimarrão)を堪能した。
 ふるさと巡り参加者の矢野正子さん(75歳、東京出身)はマテ茶屋台店員の手際の良さに「簡単そうに作ってるけど、あんなにきれいに作るのは難しいのよ」と感心。矢野さんは「疲労回復に効くというので、疲れた時によく飲んでる」と現地人と交流しながら、次の町、サンタマリア市への出発時間までマテ茶交流を楽しんでいた。(続く、仲村渠アンドレ記者)

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