JICA協力隊員リレーエッセイ=ブラジル各地から日系社会を伝える(8)=「ブラジルに呼ばれて来た」と実感=聖州ソロカバ市 野本美由喜(のもとみゆき)

日本語学校の皆さんと(中央が野本さん)

 JICA日系社会海外協力隊として2022年3月から、サンパウロ州ソロカバ市で日本語教師として活動している野本美由喜です。ソロカバ市はサンパウロから96km西に位置する人口約68万人の都市で、日系企業も多く進出しています。
 私の受入れ先である日系団体「ソロカバ日伯文化体育協会(UCENS)」は、2022年に創立60周年を迎えました。その前身は「ソロカバ日本人会」で、1955年に180日系家族により結成されました。
 実は当地では、これより早く1949年から日本語教育は始まっており、そうした大変歴史のある学校で今自分が日本語教育に携われることはとても意義のあることだと日々感じています。(汎ソロカバ邦人発展録『鳳凰樹』1972年発行より)
 さて先日、日本で働くためにブラジルを出発した生徒さんがいます。彼とは出発前に日本の地図やインターネットを見ながら、日本での生活についていろいろな話をしました。その中で、私はブラジルに来て、バスや地下鉄の運賃が一律なこと、高齢者は運賃が無料になることに驚いたと話したら、彼は逆に距離によって運賃が変わる日本のシステムが信じられないと驚いていました。こんな風に、日常の身近なテーマも含めて、私にとっては毎日が異文化体験の連続です。
 そして今、私は「ブラジルに呼ばれて来た」のだと、とても強く感じています。振り返ってみると、まだブラジル派遣が決まっていなかった時に、地元の宮崎で初めてボランティアとして日本語を教えた生徒はブラジルの大学生でした。また、海外協力隊としてブラジル派遣が決まってからも、私の町に嫁いで来たブラジル人の女性と偶然知り合いになりました。この頃から一気に、ブラジルと繋がりのある方にたくさん出会うようになりました。
 ブラジルで農業を指導した経験がある日本人の方や、ブラジル派遣の隊員OB、ブラジルに親戚がいる日本の方などと次々とお知り合いになり、赴任1年目の現在、その方たちとのご縁がさらに広がり、ブラジルと日本の両方で多くの皆さんのご支援や励ましを受けながら、頑張ってる自分がいます。

楽しく学ぶ生徒の様子

 何より嬉しかったことはブラジルに到着して2週目の研修期間中に、最初に日本で出会ったブラジル人の学生さんが、お父さんを連れて宿泊先のホテルを訪ねてくれたことでした。ブラジルは広く、会いたくても連絡が取れると思っていなかった彼と、ブラジルの地で再会できた感動はうまく言葉で表せません。
 この日、彼の家に招待されて、ブラジルで初めてのシュハスコ(ブラジル風焼肉)をご馳走になり、ご家族の皆さんとは今でも親しくお付き合いさせていただいています。
 これらも出会いと繋がりを大切にしながら残り1年間の活動に取り組み、帰国後もまたブラジルの日系社会に貢献できるように頑張りたいと思っています。

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