《ブラジル》パンデミックで学力低下=識字力ない小学生が倍増=小5、中3、高3も一律で

5年、9年、高3の学力低下を示すグラフ(16日付エスタード紙の記事の一部)

 国立教育研究院(Inep)が16日に公表した21年の基礎教育評価システム(Saeb)のデータから、基礎教育課程2年(小2)で識字力がない子供がコロナ禍前の倍以上になるなど、学力低下が明らかになったと16~17日付現地紙、サイトが報じた。
 学力低下が最も顕著だったのは小2で、簡単な単語が読み書きできない生徒が34%となり、コロナ禍前の19年に記録した15%の倍以上となった。識字力低下はそれ以外の教科にも影響し、足し算や引き算ができない生徒も、16%から22%に増えた。
 これは、コロナ禍で対面授業が絶え、遠隔授業に参加できないとか、身近な人の助けを受けられないといった理由で識字教育が行き届かなかった事が原因だ。
 コロナ禍ではインターネットへのアクセスの可否などで遠隔授業の利用率が異なり、識字力を含む学力に差が生じた。ネットアクセス者が多い私立校生や、通信教育用の教材作りに力を入れた学校の生徒は学力が落ちにくい事は以前から言われていた。今回のデータはそれを裏付けた。
 専門家は、ロライマ州のように50%以下の生徒しか参加しない地区やグループもあるので、学力低下はもっと深刻と見ている。

携帯電話で遠隔授業を受ける生徒(Divulgacao/MCTIC)

 学力の低下は5年生(小5)、9年生(中3)、高校3年生でも起きた。19年と比べると、小5のポ語は214・64点が208・01点に、算数は227・88点が216・85点に、中3のポ語は262・3点が260・41点に、数学は265・16点が258・64点に、高3のポ語は279・53点が275・97点に、数学は278・53点が271点にと落ちている。
 今回のデータには含まれていないが、専門家はパンデミック下では家計を助けるために働くなどの理由で学校を辞める生徒や学生が増えている事も指摘。中退などで学歴も実力もつかなければ、就職時にも不利になるし、質の良い労働力が得られないと企業の業績も落ちるなど、コロナ禍の影響はまだまだ大きく、長引くはずだ。
 現政権では予算上での教育費削減や、減税措置に伴う教育費減少なども起きており、教育問題は大統領選または次政権の大きな課題の一つとなっている。

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