《ブラジル》遠隔授業の学習効果は65%程度=低学年、低所得層ほど悪影響大

携帯電話で遠隔授業を受ける生徒(Divulgacao/MCTIC)

 【既報関連】新型コロナのパンデミックのため、対面授業の継続が困難になり、小学生から高校生までの学力の低下が起きていた事が報じられた16日、遠隔授業では対面授業の65%程度の学習効果しか期待できない事などをまとめた雑誌が発行された。
 『Ensaio』と題する教育評価や公共政策に関する専門誌に掲載されたのは、リオ連邦大学(UFRJ)と英国のダラム大学がリオ市内の私立校と公立校に入れなかった生徒を受け入れた提携校の5~6歳児671人を対象として行った研究結果だ。
 教育への新型コロナのパンデミックによる影響は他の国でも研究されているが、児童教育に関する研究は初めて。対面授業が中断した事で格差が拡大した事や社会経済的に低い(低所得)家庭の子供ほど深刻な影響が生じた事が判明した。
 UFRJ調査員のマリアネ・カンペロ・コスリンスキー教授によると、「小学校就学前の子供の教育は非常に大切。この時期の子供達を対面授業の場面から切り離した時に何が起きたかや、脆弱な環境にいる子供達への影響はずっと大きいという事を十分に理解して欲しい」という。
 調査では、高所得家庭の子供は対面授業を中断しても75%程度の学習効果を得ていたが、社会経済的に脆弱な家庭の子供の学習効果は48%で、対面授業で習得できる事の半分程度しか習得できていなかったという。
 今回の調査は、コロナ禍前の2019年とコロナ禍初年の2020年の教育効果を比べるという形で行われ、教師や保護者にも子供達の学習状況などの質問調査が行われた。
 それによると、大半が遠隔授業となった20年の場合、子供達の平均学力は19年の子供達と比べ、ポルトガル語で66%、算数で64%という結果が出た。対象年齢の子供達は識字教育の基礎を作る時期にあり、文字や数字の識別力の差は小学校に進んだ時点の学習効果にも大きな影響を与える。
 コスリンスキー教授は「パンデミックの間は小さな子供達にも大きな変化が生じ、学習の機会を逃してしまった子供も多いが、今ならまだ取り返せる」とし、コロナ禍の影響が顕著だった子供達を中心に学力回復のための良いプログラムを準備し、観察を継続する必要を強調した。
 今回の調査は既に報告書が提出された二つの調査と並行して行われており、2022年のデータを中間期とする報告書も提出される見込みだという。

 

★2022年2月23日《サンパウロ州》コロナ禍が教育に深い傷跡=在籍登録できない小学生=在校生も当分は補習中心
https://www.brasilnippou.com/2022/220223-12brasil.html

★2022年2月9日《ブラジル》6~7歳児の4割が読書き不可=対面授業停止の悪影響露呈=コロナ禍で広がる社会格差
https://www.brasilnippou.com/2022/220209-12brasil.html

 

★2022年9月20日《ブラジル》パンデミックで学力低下=識字力ない小学生が倍増=小5、中3、高3も一律で
https://www.brasilnippou.com/2022/220920-12brasil.html

 

 

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