【日本移民の日特集号】世界情勢と日系社会=ブラジル日本商工会議所 会頭 村田 俊典

村田俊典

 「日系移民114周年」を迎えるにあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
 コロナによってもたらされた多くの状況変化が一段落して、少しは前向きな年になるかと期待した2022年でしたが、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり世界情勢はあっという間に混沌としてきました。
 日系移民114年の歴史を振り返ると、1908年は日露戦争の終了と第一次世界大戦勃発の間にありますが、いずれも武力を行使して他国に侵略することが当たり前の世の中で、第2次世界大戦の終了で世界が一応の落ち着きとバランスを取る1945年までは、繁栄と侵略戦争がもつれ合って時代が流れていたのだという事を学びます。
 私をはじめとする平和な時代を生きてきた日本人の戦後世代の多くは、ロシアのウクライナ侵攻を大きな驚きでとらえていますが、歴史的闘争を火種とする中東を取り巻く情勢や、イデオロギーなどを背景とするテロリストとの戦いを一つ一つ振り返りますと、地球上本当の平和が訪れたことは一度もありません。
 週末のリベルダーデ地区の賑わい、各地で行われる日系のフェスタなどでは、日系社会の大きな繁栄を今は感じ取る事ができます。しかしながら、大多数の日系人は移民史料館などでしか移民の歴史を振り返る事は出来ないのですが、ここまで来るのには決して平坦な道のりでないというのが日系移民の歴史です。
 1908年から始まった多くの移民の方々の苦労は取り巻く世界環境と自身が置かれた厳しい環境の中で、「つい最近まで」奮闘してきた歴史であることを強く認識します。
 だからこそ、ブラジルの日系社会には、日本の戦後の安定した繁栄とは違い、山あり谷ありを乗り越えてきた力強いDNAが引き継がれていると感じます。そして、その歴史を次の世代に語り継ぐことが次世代の日系社会の繁栄の基礎を作るのだと考えます。
 これから世界情勢が一段と混沌として行く中、今改めて移民の方々の歴史を振り返りながら、日系社会が誇るDNAを若い世代に如何にして繋げて行くかを、私たち商工会議所をはじめ日系の諸団体が確りと考え、実行してゆく事が大切です。

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