《記者コラム》豪雨の悪夢再び―自然が牙を剥く時

大規模な土砂崩れでえぐられた山肌(16日付Valor紙電子版の記事の一部)
大規模な土砂崩れでえぐられた山肌(16日付Valor紙電子版の記事の一部)

 15日夜、紙面やサイトの作業を終え、一息ついた時、「ペトロポリスで死者18人」との声が聞こえ、思わずテレビに目が釘付けになった。
 6時間で月間降水量を上回る259ミリの雨が降り、洪水や土砂崩れも起きたと報じる間には、坂道を下る濁流や押し流される車、山が崩れ、雨水と土砂が滝のように雪崩下る様子も映し出された。
 16日朝の報道での死者数は34人、36人、41人と増えている。車や岩、樹木を押し流しながら坂道を下る濁流と、それに驚いて息を呑む住民の姿、うず高く積もった土砂も映し出される。
 リオ州山間部は2011年にも900人以上の死者が出る豪雨に襲われ、ペトロポリスも被害を受けた。今回の被害は同市に集中しているようだが、自分や家族の命、家屋、財を失った人が多数いる事には変わりない。死者数は増える事はあっても減らない事を考えると、心が萎える。
 水害は昨年10月以降、国内各所で起きており、緊急事態を宣言した自治体は例年以上に多い。昨年来の水害の激しさは気候変動と関係ありとの報道が繰り返される度、人の活動が自分達の首を絞めている事、自然が牙を剥けば人は無力である事などを痛感する。
 山間部は樹木を伐採し、山肌に沿って家を建てる事も多いから、豪雨の被害も大きくなりがちだが、人が手を加えていない森がある山肌でも土砂崩れは起こり得る。
 自然災害の多くは人災的な側面を持つ事、共生、共存の大切さ、利益や利便さを求め、自然や調和を破壊してきた歴史など、思いを馳せる事は多い。
 今回の豪雨では、11年の豪雨後に設けられた警戒サイレンが機能したと聞き、少し安堵し、行方不明になった飼い犬発見の報に心和んだ。だが、11年豪雨の後、国内各地で行うと約束された危険地域の解析と住民移動が十分な範囲で行われていない事も明らかになった。
 ペトロポリスではこの後も雨が続くとの予報が出ている。雨の被害がこれ以上拡大しない事と速やかな復興、同様の災害が他で起きても被害を最小限に抑える工夫をと心から願わされる。(み)

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