『3か国語寿限無』披露=日系3世女流落語家 らむ音=文協小講堂200人満席

聴衆と記念写真を撮るらむ音さん
聴衆と記念写真を撮るらむ音さん
口演中のらむ音さん
口演中のらむ音さん

 日系ブラジル人3世で女流落語家のらむ音さんが22日午後2時、サンパウロ市のブラジル日本文化福祉協会ビル・小講堂で落語の口演を行った。主催は国際交流基金サンパウロ日本文化センター。日本人、日系人、老若男女約200人の聴衆で会場は満席。日本語・英語・ポルトガル語による『3か国語寿限無』などが演じられた。
 らむ音さんは日本着に国際交流基金のロゴマークが入った帯を締めて舞台に上がり、大きな声を張り上げて「ボア・タルジ」とあいさつ。自身が神奈川県横浜市に生まれた日系ブラジル人3世であり、武蔵野美術大学でデザインについて学び、2017年から9年間、プロの落語家として活動していると自己紹介した。
 続けて落語家が使う小道具を紹介。扇子は床をたたいて音を出し、戸を叩いた時の音を表現したり、おじいさんを演じる際には床につくようにして杖の代わりに用いる。肩に当てれば荷物を運ぶ「天秤棒」になり、振り下ろせば日本刀、指に挟めば筆、口元で吸えば煙管になると話した。手ぬぐいは本や財布、贈り物箱になるという。
 その後、最初の演目は、らむ音さん得意の日本語・英語・ポルトガル語による『3か国語寿限無』。子の幸福を願うあまりに縁起の良い言葉を多く付けすぎてしまう滑稽話だ。
 「あらまあ、金ちゃん、すまなかったね。お前の頭にこぶをこしらえたって」
 「寿限無寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末……ポンポコピーのポンポコナの長久命が金ちゃんの頭へこぶをこしらえたんだとさ」
 「あんまり長い名前だから、こぶが引っ込んじゃった」
 といったやりとりが繰り広げられる。
 らむ音さんは5歳までポルトガル語しか話せなかったという。会場からは元気の良いべらんめい調の早口に感心する声があがった。
 続いて『饅頭怖い』。長屋に住む若者たちが仲間の男を怖がらせようと男が苦手とする饅頭を用意し、怖がらせようとする話。今回は饅頭をブラジルのお菓子、ブリガデイロに代えて演じられた。
 次は『まずいソバ』。なかなか茹で上がらない、うどんのように太い、紙のように平べったいソバ。まずいソバをずるずると音を立てて、すすっていく様をあたかもそこに実物があるように演じて見せた。
 最後は怪談『お菊の皿』。腰元のお菊は家宝の十枚揃いの皿の一枚を割ってしまったため殿様に手討ちにされた。屋敷内の井戸に投げ捨てられ、その後、幽霊となって夜な夜な足りない皿の数を数えるという話。幽霊となったお菊を演じる時はお団子に結っていた髪をばさりととき、髪を前に振って顔を隠し、怖ろし気な雰囲気を漂わせ、お菊を怖がる者を演じる時には、髪を後ろに戻し、瞬時に役柄を入れ替えるなど見事な落語技術を披露。聴衆を落語の世界に見事に引き込み、口演を終えた。

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