アマゾン地下を流れる〝見えない川〟=6千kmの帯水層『ハムザ川』

地表を流れるアマゾン川流流域の地下にも巨大な滞水層がある(Wikimedia Commons)
地表を流れるアマゾン川流流域の地下にも巨大な滞水層がある(Wikimedia Commons)

 アマゾン川の地下約2千~4千mに、全長6千kmを超える巨大な地下水流が存在することが明らかとなっている。この水流は、研究者ヴァリヤ・ハムザ氏にちなんで「ハムザ川」と呼ばれ、アマゾナス州、アマパー州、パラ州の地下を通り、最終的には大西洋へと流れ出ている。
 正確には「帯水層」であり、明確な水路ではなく、多孔質かつ透水性の地層を通じて水を蓄え、移動させる地下の地質構造だ。2010年にアマゾナス連邦大学の博士課程に在籍していたエリザベス・ピメンテル氏の研究により発見された。
 発見のきっかけは、ブラジル国営石油会社ペトロブラスが1970年代から80年代にかけて掘削した石油井戸241基の地熱データで、分析するうちに温度分布に異常を感じたピメンテル氏が、地熱の低さに着目。地中に水が存在し、熱を拡散している可能性が浮上したことから、広範な調査に乗り出した。こうして見えてきたのが地中深くをゆっくりと流れる広大な水の通り道だった。
 ソリモンエス川とアマゾナス川の流域とマラジョ島の地下4千mの深さで西から東へ大規模な水の流れがあり、アマゾン川の河口付近で大西洋の深部へ流れ込んでいることを特定した。
 この水流は単なる貯水層ではなく、実際に水が流れている「動的」な構造を持つ。地下水は洞窟内の激しい流水ではなく、岩の隙間をゆっくりと流れるものであり、それがアマゾン地域における水の流れの実態である。幅は200~400km、流速は年間10〜100m程度であり、アマゾン川の毎秒5メートルと比べると極めて緩やかである。
 だがその流量は毎秒3090立方mとされ、サンフランシスコ川の流量(毎秒2700立方m)を上回る規模を持つ。命名の由来となった地球物理学者ヴァリヤ・ハムザ氏も「遅いが確実に水は動いている」と語っている。
 水の供給源はアクレ州とされ、アマゾン流域の雨水や川の水が地下に浸透して形成されている。水は大西洋に向かって地中を移動しており、その流れはプレートの傾斜に従って形成されたものとされる。これは、地表のアマゾン川と同様に、南米プレートの地質構造に基づく自然の流れだ。
 ピメンテル氏は、この発見が将来の水資源としての可能性も示唆すると語っている。地表の水が枯渇するような極端な事態には、飲用水として利用できるほか、この深層の地下水が多目的に活用できる余地もあるという。
 この帯水層の存在は、地下水の循環や地熱分布の理解を大きく変えるものだ。ただし、正確な流速や全体構造の把握には今後の調査が必要と言われる。科学界では依然として議論もあるが、アマゾン地下の巨大な水系の存在は、私たちの知られざる地球の姿を浮かび上がらせている。(1)(2)(3)

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