ブラジルの中立性めぐり疑問も=ロシアがグローバルサウス関係誇示

今週水曜日にロシアの首都モスクワに到着したルーラ大統領(写真:リカルド・スタッカート/PR)
今週水曜日にロシアの首都モスクワに到着したルーラ大統領(写真:リカルド・スタッカート/PR)

 8日付テラサイト記事(1)によると、ルーラ大統領は5月9日にモスクワで開催されるナチス・ドイツに対する旧ソ連の勝利80周年を記念する式典に出席する。この式典には、中国の習近平国家主席をはじめ、キューバ、スロバキア、インドネシアなどグローバルサウス諸国の首脳約20人が招かれており、ロシアの外交戦略の一環として注目を集めている。
 中心行事は、赤の広場で行われる軍事パレードだ。これはプーチン政権下の2008年以降恒例の行事で、ロシア軍の力を誇示する場であると同時に、第2次世界大戦の勝利という歴史的記憶を国民に再認識させる目的がある。ジョンズ・ホプキンス大学の歴史学者セルゲイ・ラドチェンコ教授は、「5月9日はロシアにとって象徴的な日であり、プーチンにとっても『強く誇り高いロシア』を内外に発信する絶好の舞台だ」と述べている。
 この記念行事は、ウクライナ侵攻で国際的孤立が続くロシアにとって、いかに多くの国が西側以外の選択肢としてロシアと協調しているかを世界に示す意図も含まれている。キングス・カレッジ・ロンドンのグルナズ・シャラフチディノワ所長は、「クレムリンは、グローバルサウスとの連帯を通じて、西側帝国主義に対抗する姿勢を強調している」と分析している。
 ルーラ大統領の今回の出席には、単なる外交儀礼を超えた意味合いがある。彼は式典後、中国・北京で開催される第4回中国・CELACフォーラムにも出席予定で、ロシアと中国という二大勢力圏を巡る重要な外交日程だ。さらにルーラ氏は、ロシア・ウクライナ戦争の和平を目指す「平和の使者」としての役割を強調してきた。昨年には中国と共に和平案を提示したが、ウクライナのゼレンスキー大統領には拒否された経緯がある。
 8日付ガゼッタ・ド・ポーボ(2)によると、この式典は単なる歴史的記念を超え、ロシアにとっては過去の栄光と現政権の正統性を結びつけ、国際社会における自身の正当性を主張する舞台ともなっている。今回、ルーラ大統領がロシアや中国、キューバ、ベネズエラなど権威主義的な政権の首脳と共にロシアの式典に出席したことについて、ルーラ氏が常々掲げる民主主義や人権を重視する姿勢と矛盾するとの批判が国内外から上がっている。
 しかも「中立的な和平の仲介者」を目指す立場にもかかわらず、グローバルサウス諸国と共に、戦争当事国ロシアとの関係を強調するという行動は、ブラジルの中立性を損ないかねず、外交方針の一貫性や信頼性にも疑問が投げかけられている。
 こうした外交的なやり取りの裏で、戦勝記念日は戦争と平和、そして国際秩序をめぐる立場の違いを浮き彫りにする機会となった。

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