邦字紙デジタル・コレクション=フーバー研究所の上田氏が解説

上田薫氏と山下氏

 スタンフォード大学フーバー研究所キュレーターの上田薫氏(兵庫県出身)が調査のためにブラジル訪問し、11月22日にブラジル日本移民史料館などで打ち合わせを行った。同研究所が公開する「邦字新聞デジタル・コレクション」(https://hojishinbun.hoover.org/?l=ja)では、すでに著作権が切れた、アメリカ大陸とアジアで発行された214の戦前の邦字新聞112万ページ分の画像がアップロードされ、オンラインで自由閲覧できるようになっている。
 上田氏は「全文テキスト化しているので検索ができ、とても便利です」と利用を勧める。同事業はハワイ大学ジョン・ステファン名誉教授による寄付金で9年前から運営を開始、7年前から自由閲覧公開が始まった。
 ブラジル日本移民史料館とも2021年から提携し、全米人文科学基金からの助成金を獲得、すでにブラジル時報、日伯新聞をオンライン公開している。来年から聖州新報、日本新聞のデジタル版公開の作業も始めるという。
 山下リジア同史料館運営委員長も「当館にマイクロフィルムがあればそこからデジタル化し、ない場合はJICA貸与の大型スキャナーで画面を読み取り、研究所に送っています」と補足する。
 上田氏は「フーバー図書館は、戦争を繰り返さないために世界各国の戦争関連資料の収集を目的に設立されました。新聞は情報源として重要で、大手紙から地方紙、団体紙まで幅広く収集しています。米国で日本語資料は真珠湾攻撃後、破棄されたりして一次資料が少ない。その中で大学図書館に残っている邦字紙に書かれた内容の貴重さが注目された。新聞は時間が経つとボロボロになるので、デジタル化して研究しやすいようにしたころから、このプロジェクトが始まりました」とのこと。
 最後に「戦争があると人が移動する。今回は満州引揚者でブラジル移民になった人の調査を兼ねてきています」と説明した。

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