台風の代わりに温帯低気圧=直径数百キロの巨大な渦巻きも

「GOES―East」が捉えた、南大西洋に直径数百キロの大きな渦巻き状の雲が広がる11月4日の驚異的な衛星画像(4日付メット・スル・サイトの記事の一部)
「GOES―East」が捉えた、南大西洋に直径数百キロの大きな渦巻き状の雲が広がる11月4日の驚異的な衛星画像(4日付メット・スル・サイトの記事の一部)

 ブラジル最南端のリオ・グランデ・ド・スル州(以下、南大河州)沖で発達した勢力の強い「温帯低気圧(ciclone extratropical)」が、サンパウロ州など、南米大陸の中緯度地域にも強風による被害をもたらしたことが、衛星画像による雲の様子から記録された。気象専門サイトのメット・スル・サイト4日付など(1)(2)が報じた。
 2016年8月5日付ウェザーニュース「台風と温帯低気圧の違い」によれば、日本では「台風は北上して弱まり、温帯低気圧に変わった」などと言われることが多いが、決して安心はできない。
 台風は「暖気が集まって発達する」のに対し、「温帯低気圧」は「暖気と冷気の温度差で発達する」という違いがある。日本の場合は南の暖気で発達した台風が、北進して寒気に触れて温帯低気圧に変質する。ブラジルでは、最初から南極下ろし寒気と大西洋上の暖気が合わさって温帯低気圧として発達する。
 温帯低気圧が台風より弱いわけでないことは、中心が南大河州沖にある温帯低気圧の強風と豪雨が、サンパウロ州にも大打撃を与えたことで証明される。「ブラジルは台風がない」と言われてきたが、その代わりに温帯低気圧が発生する。
 この温帯低気圧は発生後に外洋で急激に成長して勢力を強め、南大西洋に直径数百キロの大きな渦巻き状の雲が広がる驚異的な衛星画像を映し出した。南大河州の気象観測所によると、3から4日にかけての最大風速は、同州南岸部のリオ・グランデ港で89km/hを記録した。
 同州の同港は強風と荒波のために3日の晩にすでに閉鎖された上、翌日も暴風雨の影響で航行が中断され、港への船舶の出入りが停止する措置がとられた。
 州都ポルト・アレグレ市で最も強い風が吹いたのは3日の夜で、サルガド・フィーリョ空港で70km/h近い突風を記録。これは都市内の地形や地勢による影響があり、特に山々や建物が風の通り道を制限し、風が隙間を通ることによって強さが増幅するからだ。4日午後には再び風が強く吹き、市内様々な地域で停電が相次いだ。
 サンタカタリーナ州では、最も激しい突風は南部高原の標高の高い山頂で発生した。同州環境資源・気象情報センターのデータによれば、4日に観測された最大風速はモロ・ダ・イグレージャで107km/h、モロ・デ・ウルペマで79km/h。南海岸ではラグナ市のサンタマルタ灯台で80km/hを記録した。
 3日夜には温帯低気圧の中心がプラタ川河口の東にあり、最低気圧994hPaを記録。4日朝には中心気圧980hPaに下がり、西経46度、南緯35度に位置していた。
 3日の衛星画像では、大型で強烈な温帯低気圧が目立っていた。米国立海洋大気庁(NOAA)と米国国家航空宇宙局(NASA)によって運用される衛星「GOES―East」の画像によると、ブラジル海岸にあるこの温帯低気圧がどれだけ巨大であるかが分かる。温帯低気圧が大陸から遠ざかるにつれて風は弱まり、5日には南大河州は安定した天候となった。

最新記事