アルゼンチンは今=在住者リポート=東京「食品開発展」に参加=中南米日系農業者ら最新技術に熱視線=9

 東京ビッグサイトで開催中の「食品開発展」に14日、中南米の日系アグリビジネス研修生一行が訪れた。研修生らは食品の安全性を確保する新素材や新技術を熱心に吸収。訪日中の筆者が目の当たりにした彼らの姿を以下報告する。

 アグリビジネスとは農業とビジネスを組み合わせた造語で、農業にまつわる経済活動全般を指す。
 アグリビジネス研修は中南米日系農業者等の連携交流・ビジネス創出のために農林水産省が主催し、中央開発株式会社が行う委託事業。2019年以来3年ぶりに実施され、9日には「生産性」を研修テーマとする研修生ら10人がブラジルなどから到着した。
 農林水産省は日本の食の安全と供給安定化を図るため、食料供給安定化国際農業連携対策事業を行っている。アグリビジネス研修などで南米の日系農協や農家が着目されているのは、付加価値の高い農産物を生産する以上に、食の安全と供給安定化を重視しているからである。

農林水産省「食料の安定供給に関するリスク検証」より

 農林水産省の「食料の安定供給に関するリスク検証」(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/risk_2022.html)によれば、日本の供給カロリーは、輸入が63%を占めている。輸入割合は米国、カナダ、豪州に次いで、ブラジルがとうもろこし、大豆他で6%と約一割を占めている。
 アグリビジネス研修生一行は幕張メッセの農業WEEKも視察した。
 研修生らは、いちごやパパイヤ、アボカド、アスパラガスの生産と販売、農業機械生産と販売などに携わっている。今後は日本の第六次農業経営や、アグリビジネスの実践の場へ飛び込む予定だ。
 研修生は様々な分野から参加しているので、関心を示すブースも自ずと異なり、いずれの展示会においてもそれぞれが興味のあるブースに立ち寄るので、展示会を見るペースは遅々として牛歩のようであった。夏目漱石はよく弟子に「牛のように進め」と言っていたという。牛は少しずつであるが、真面目に着実に進んでいくからだそうだ。
 筆者は30年程前にアルゼンチンに到着して、日系社会の大先輩に大変お世話になった。残念ながら多くの方々にはもう会えないが、千載一遇の機会をいかに活かそうかという研修生の熱心なまなざしに、先輩方の面影を見て、心を打たれた。
 研修生らは日本初体験の人も多く、見るもの、聞くものの全てが楽しく、思っていた以上の体験ができたという感想だった。次世代のリーダーが父祖の国で育成され、日本側もこれまでと違う視点の角度から質問を受けることで新風が得られたことと思う。2年間のオンラインセミナーで互いをよく知っているのも心強い。
 20日には研修テーマ「土壌」のグループ10人が到着した。25日には、農林水産省で日本の農産業従事者との商談会に臨む。
 ようやく再開された対面研修の機会に、新たなアグリビジネスが誕生することを期待したい。

「生産性」を研修テーマとする研修生ら10人

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