《アルゼンチン》ブラジル人がクリスチーナ副大統領を暗殺未遂=眼前に銃口、引き金引くも不発

事件発生の瞬間(Twitter)

 アルゼンチンの元大統領で現副大統領のクリスチーナ・キルチネル氏が1日、殺人未遂事件に見舞われた。犯人はブラジル人男性で、国内外で大騒動となった。1、2日付伯字紙、サイトが報じている。
 事件は1日夜、ブエノスアイレス市レコレッタ地区の同氏の自宅前で起きた。帰宅したクリスチーナ氏が車を降りた瞬間、銃を構えた男が迫り、同氏の顔に銃を突きつけると引き金を引いた。
 幸い不発だったため、同氏は難を逃れ、犯人は護衛に取り押さえられた。副大統領にけがはなかった。押収された銃は38口径(32口径との報道もあり)のもので、銃弾も5発入っていた。
 クリスチーナ氏は汚職嫌疑で裁判を受けており、熱心な支持者と報道陣、反対派が同氏を追い回す状態が続いている。事件当時も多くの人が詰めかけていたため、100人規模の警備にも関わらず、容疑者接近を許した。事件の瞬間を録画した動画は同国内外を一気に駆け巡った。
 犯人のフェルナンド・アンドレス・サバグ・モンティエル容疑者(35)は、父がチリ人、母はアルゼンチン人。サンパウロ州生まれのブラジル国籍者だが、6歳の頃からアルゼンチンに移り住んでいた。
 同容疑者はアプリの運転手で、2021年に刃渡り35センチの刃物を持っていて捕まり、要注意人物扱いされていた。1日には自宅から9ミリ口径の銃弾100発が押収されたが、近所との付き合いはなかったようだ。
 犯行の動機は不明だが、ネットでの言動によるとナチス信奉者で、体にナチスの象徴の黒い太陽(記号)の入れ墨が彫られていると報じられている。ネット上でも「共産主義の悪魔」という言葉を使うなど、左派への憎悪を顕にしていた。同国のフェルナンデス政権は左派だ。
 フェルナンデス大統領はこの事件にショックを受け、翌2日を急遽、全国的に休日とした。同大統領は「1983年に我が国に民主政治が復活して以降、最も深刻な出来事だ」と遺憾の意を示した。大統領は2日の閣議で今後について話し合う予定だ。

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