《記者コラム》ボルソナロ躍進の背景を探る=SNS発信が地方保守票を開拓

先週のボルソナロ大統領の木曜定例ライブ。51万人が試聴、いいね11万。右側に延々と視聴者のコメントが出てくる(本人公式ユーチューブ)

 第1回投票前後から本紙編集部にも両大統領候補に関する意見が、訪問や電話など様々な方法で直接に寄せられるようになり驚いている。
 たとえば「ブラジル日報はボルソナロの悪口ばかり書いてルーラの味方か!」「グローボやフォーリャ、ヴェージャなど左側のメディアの翻訳ばかりしている。ジョーヴィン・パンなどのニュースも入れてくれ」という声だ。
 代表的な意見をまとめると「一審のモロだけじゃなく、二審で有罪判決が出たルーラはれっきとした犯罪者。別に無罪放免されて選挙に出ている訳ではなく、裁判のやり直しを最高裁が命じたから、ブラジリアでやり直すだけ。無罪判決じゃない。汚職があったことはペトロブラスも幹部職員も認めている。たしかにボルソナロの政策はヒドイが有罪にはなっていない。汚職も立証されたモノはない。ルーラが大統領になったらまた盗むに決まっている。どっちもヒドイが、まだボルソナロの方がマシ」というものが多い。
 実際、第1回投票を見てみれば、有権者は見事にルーラとボルソナロに二分された。双方とも50%近い。まるで最初から決選投票になったような結果だ。
 在日ブラジル人は当地日系社会の延長であるから、その票を見れば日系社会の実態がよく分かる。日本全体ではブラジル同様にルーラが47・13%、ボルソナロは41・63%。
 ところがブラジル人最多の名古屋管轄だけ見れば、ボルソナロ79・2%と圧勝した。コラム子はこの名古屋が、同じ日系人集中地域としてサンパウロ州の情勢に近いと推測している。
 よって本紙読者も当然、大半がボルソナロ支持者の可能性が高い。だから反ボルソナロ的な記事が多いグローボやフォーリャ、エスタードの論調をそのまま翻訳している本紙に対して、不満を持つ読者が必然的に多くなる。
 今のブラジルを政治潮流で見れば、国民は完全に二分されている。そのどちらかに寄った記事ばかり出れば、「おまえの新聞は偏っている」と思う読者が常に半分以上いる状態だ。これは邦字紙の存続にも関わる深刻な事態だ。
 コラム子が『邦字紙の使命』として最も大事だと思うのは「特定の思想傾向を広める」ことではなく、「ブラジルの正確な現状を伝える」ことだと考える。「民主的な紙面」とはその国の現状を代表するいろいろな意見が、バランス良く紙面にでることではないか。
 かつてのように複数の邦字紙がある状態なら、それぞれが思想的に偏っても、読者が自分の好きな論調の新聞を購読すれば良かった。読者が選択できた。ところが現在は1紙しかないから読者は選択出来ない。
 ブラジルのメディアは地元有力政党や政治家が自分の主張を広めるために創立した会社が多い。だから特定の思想を喧伝して広めるのが元々の役割だ。ところが邦字紙の場合は1紙しかなく、読者はそれを通して現状を知るしかない。
 大手メディアそのままの記事だけが出るのでは、読者が「実際のブラジルの姿」を紙面から読み取れない。逆側の思想傾向が排除されるというバイアスがかかると、読者は正しい判断が出来なくなる。
 例えば反ボルソナロ側に偏るのではなく、ボルソナロ側の意見も同様に紙面に出た方が「民主的な紙面」であり、両方を読んだ読者が、自分なりの判断を客観的に下すのが、邦字紙の理想的な状態ではないか。
 そんな読者のいらだちが第1回選挙の前後に編集部に集中したのではないかと思う。そんな判断に基づいて、コラム子はできるだけ中立的な分析を心がけたい。

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