在住者レポート=アルゼンチンは今=1月13日付け=最高気温42度の異常熱波=電力需給逼迫で大停電発生=古い発電設備は経済システムのせい?

ブエノスアイレス市(2009年、Luis Argerich wikimediacommons)

 ブエノスアイレス市及び近郊地域で11日(火)午後2時、停電が発生した。
 その時私は取材のため、自宅のネット回線を使用して通話アプリで友人と会話中だった。停電により、ネット通信が切断されてしまったので、停電の影響を受けない携帯電話から電話を掛け直したが不通。こうした場合、電話利用者が急増するため、電話回線もパンク状態になりがちだ。
 市内48地区中32地区で電気が止まっていた。私の住むパレルモ地区イタリア広場付近にはバスターミナルや地下鉄があり、普段から利用者で混みあっている。停電によって、信号が機能せず、地下鉄も完全に不通。復旧してもまたすぐに停電が起き、商店も閉店せざるを得ない。復旧作業は夕方までかかり、地域によっては夜まで続いた。ここまで大規模で復旧に時間のかかる停電は久しぶりだ。
 今週のブエノスアイレスは最高気温42度を記録(最低気温は21度)する猛暑が続いており、停電の発生した11日は、1906年からの観測史上2番目の暑さとなる最高気温41・1度の日だった。
 一般的に、電気の需要が高まり、発電設備への負荷が強まると、設備から火事が発生する可能性が高まるため、発電を一時中断し、停電するようになっているらしい。
 今回の大規模停電の原因も、猛暑による電気使用量の増大(クーラーの使用など)にあるという。配電設備も一部炎上し、その修復に時間がかかったようだ。
 13日には大統領令によって、同日から14日まで公的機関は自宅勤務及び休日となった。少しでも電気需要を抑えるためだ。

スーパーでいつも販売されるろうそく4本セットで89ペソ(約97円)

 とはいえ、長くアルゼンチンに住んでいると停電自体は珍しいことではない。私は91年2月の終わりにブエノスアイレスに到着した。日常品の買い物に連れて行ってくれた配属先の役員の人が、ささっとロウソクとマッチ箱を買い物かごに入れてくれたのを覚えている。日本から来たばかりの私には名称は知っているが久しぶりに見る代物であった。
 私が「ロウソク台はいらないの?」と言うと「そんなものはいらないよ。ロウソクに火をつけて蝋を数滴、耐熱ガラスコップの中にたらして、乾かないうちにロウソクを立てるのよ」と生活の知恵を教えてくれた。
 そして「できるだけすぐ分かるところに仕舞っておくこと」と念を押された。停電は昼間に起きるとは限らない。それからはどこに引っ越しても台所の棚の左端に常備して、手に届くようにしておくことにした。
 計画停電などで事前に準備が出来る場合は、出来るだけ水を汲んでおくことも重要だ。水道ポンプも電気モーターだから水が使えなくなることがある。
 7階に住んでいるときに停電にあったことがあった。エレベーターは動かない。その日「引っ越し先は低層階にしよう」と心に決めた。
 最近は日常的に停電が起きることはなくなった。10年ほど前は、クリスマスから正月にかけて停電が起きることが多かった。復旧には数時間、地域によっては数日かかることもあった。
 前々政権の時は、クリスマスに停電するとクリスティーナ大統領の名前にかけて「クリ停電だな」
と一人でにやにやしていた。当時は、電気などの公共料金への補助金が多く、一般庶民は安いからと電気をどんどん消費をしていたものだ。

 前政権時に補助金がほぼ撤廃され、電気料金は高騰したように見えた。しかし実際は、ちゃんと節電すれば料金の支払いも少しは安くできるし、多く使ってしまってもちゃんと料金を払っていれば、電気が切れることはなくなった。
 この間に電気会社も設備投資をしてくれればよくなったのにと思うのであるが、それはなかなかうまくいかないらしい。電気会社側にすればアルゼンチンの経済システムに問題があって設備投資が進まないという。
 まず配電設備を維持するには部品の定期的な交換が必須である。これはスペイン、日本などから輸入して取り替えなければならない。アルゼンチン経済では輸入のために外貨、即ちアメリカドル獲得のための手続きをするのが大変難しく、中央銀行と交渉しなければならない。ドルが得られなければ部品を購入できない、部品を購入できないので設備を整えられない。この繰り返しで今あるものを騙し騙し使わなければならないというわけだ。

マタデーロス地区に設置された大型発電機。同地区に住む日本語学生マクシさんからは「こんにちは!今朝うちの近所に停電しました。だから、電気が出入りします。la luz esta semana y la anterior fue inestable. lo que pone en peligro los electrodomésticos.(今週だけではなく先週も電気は不安定ですから、うちの電化製品が壊れる恐れがあります)」との近況を伝えるメッセージが届いた。

 今回の大停電とは別に、2021年年末にも市内では停電が発生している。停電の発生したマタデーロス地区(屠殺場があり、市内からは外れた地域)には、発生から一週間で数台の大型発電機が設置され、電気は使えるようになっていた。同地区はこの大型発電機のおかげで今回の大停電の被害は免れたそうだ。
 何が幸いでそうじゃないのか。アルゼンチンではその判断が非常に難しい。

筆者略歴
 相川知子 広島出身 JICA海外開発青年として1991~4年にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスにある在亜日本語教育連合会(教連)で活動。その後、同国に定住し、スペイン語通訳、翻訳、教師、食品ロジスティックアドバイザー、テレビ撮影コーディネーター、ライター業などに従事。現在は「アルゼンチンをはじめラテンアメリカの人々の素顔を日本に紹介をすること」をライフワークとし、自身の運営するブログ『主観的アルゼンチン・ブエノスアイレス事情ブログ』(http://blog.livedoor.jp/tomokoar/)にて情報発信を行っている。

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