特別寄稿=在住者レポート=アルゼンチンは今=1月7日付け=第3波襲来、累計死者11万7千人=衛生パス・アプリの運用開始=コロナ禍中の入国手続きは?

アルゼンチンの新規感染者数推移グラフ(Via Google, JHU CSSE COVID-19 Data)

新規患者数が11万人超え=年末の1週間で感染急拡大

 アルゼンチンに新型コロナウイルス感染拡大の第3波が襲来している。7日のアルゼンチンの新規患者数は11万533人、死者数42人、累計患者数は613万5836人、累計死者数は 11万7428人。6日から2日連続で10万人超となった。年末から1週間で倍増と急激に広がっている。国立統計局によると2021年の人口は4580万8747人。そのため13・39%が罹患したことになる。
 各地に設けられたPCR検査所では急増した検査希望者への対応で運営体勢が逼迫。アルゼンチンの保険当局、食品医薬品局(ANMAT)は5日に急遽、科学技術省開発の検査キット「Flash Prep ARN SARS―CoV―2 Highway」の薬局販売を決定した。PCR検査所を訪れた人の陽性判定率は56・20%に上っている。
 昨年12月30日にはすでに、当時の過去最多新規患者数5万506人を記録し、第3波の襲来が知らされていた。年明けて1月4日には8万1千210人を記録。年末年始に感染は確実に拡大している。

衛生パスの運用開始=病床占有率は微増に留まる

 政府はこの第3波を抑えるため、ワクチン接種を促進する方針だ。現在のワクチン接種率は72%で、第3回目接種も行われている。
 1日からは政府発行の衛生パス「Pase Sanitario」の運用が開始された。在住地域によるが、ブエノスアイレス州ではレストランやバール、文化イベントへの参加に衛生パスの提示が必要となった。
 また、13歳以上の人は旅行やパーティー、1千人以上の大型イベントに参加する際には、政府発行の携帯アプリ「Cuidar」からワクチン完全接種証明を取得しなければならない。
 アルゼンチンでは居住者全員に登録番号付きの身分証明書(通称:DNI)が発行される。衛生パスの情報はDNIに紐付けられる。これに対し「国家的強制」「経済を停滞させる」などの反対意見が出ている。
 また「利用したくても、アプリ容量が大きく、携帯にダウンロードできない」と訴える人が増えている。2020年の国民携帯電話所持率は88%(アルゼンチン国立統計局調べ)だが、購買力の問題で型が古く、データ容量の少ない機種を使っている人が多いことから起きている問題と言えそうだ。
 コロナ発症者と接触した人の在宅隔離期間については、濃厚接触者の場合、合計10日間と規定した。ただし、ワクチン完全接種者の場合は5日間で、さらに5日間は注意期間として大きなイベント参加禁止という制限がある。ワクチン未接種または1回なら、10日間の完全隔離か、7日間の隔離後、PCR検査後陰性であれば、最後の3日間は注意隔離期間となる。
 幸いな事に病床占有率はブエノスアイレス市37・5%、首都近郊地域(通称AMBA)は38・7%と昨年末の35%からその上昇率を抑えられている。しかし集中治療室患者数は1千572人居り、予断を許さない状況である。

コロナ禍中のアルゼンチン入国手続き

「SAFE TRAVELS」ロゴマーク

 クリスマス、年末年始休暇に加え、夏のバケーションシーズンの首都ブエノスアイレスでは国内からだけではなく、ブラジルをはじめとする近隣諸国からの外国人観光客が増えている。
 筆者の居住するパレルモ地区の大型スーパーではポルトガル語で話す家族連れや、近隣諸国のスペイン語のアクセントで話すカップルなどが12月に比べ多くなってきた。アルゼンチン観光地では世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の『SAFE TRAVELS』ロゴを得て衛生コントロールを遵守しながら、安全安心な旅行先を提供しており、訪問地でこのロゴがあればその証明となる。
 現在アルゼンチンは空路での水際対策を継続中。陸路国境の多くが閉鎖されているか制限がある。観光客としてアルゼンチンの国際空港における入国には以下の手続きが必要となる。

1.出発72時間前にPCR検査を行い、スペイン語、ポルトガル語、または英語の陰性証明書を取得する。

2.海外旅行保険で新型コロナウイルス対応保険に加入し、証書を得る。

3.アルゼンチン政府サイトにて宣誓書(DECLARACION JURADA、略称DDJJ)に個人情報、フライト情報、滞在情報などを入力、PCR検査の陰性証明書のデータを提出する。アルゼンチン人の場合は身分証明書(DNI)の発行日も入力する。これらの情報を携帯電話で提示可能な状態にしておくか、もしくは印刷し携帯しておく。

4.『入国14日前ワクチン完全接種証明書』を携行し、ワクチン接種済みの回答欄に「はい」とチェックを入れ、用意しておく。

 上記1~4を行えば、隔離措置が免除され、そのまま観光が可能となる。また滞在期間が長い場合、3、5日目にPCR検査を受けて陰性確認をすることとなっている。
 なお、これらを守らない場合は、6か月から2年の禁固刑。また上記への指示を行う公務員に従わない場合は15日間から1年の禁固刑となる。
 地域ごとの規定や感染状況の確認はアルゼンチン政府発行のアプリ「Cuidar」で確認が可能だ。

【参考リンク】
■アルゼンチン政府―PASE SANITARIO衛生パス取得について:https://www.argentina.gob.ar/salud/coronavirus-COVID-19/pase-sanitario-nacional-2022
■アルゼンチン国家統計局―2021年累計人口:https://www.indec.gob.ar/indec/web/Nivel3-Tema-2-24
■アルゼンチン政府―科学技術省開発の検査キット販売をアルゼンチン食品医薬品局(ANMAT)が緊急認可:https://www.argentina.gob.ar/noticias/la-anmat-autorizo-el-uso-del-kit-flashprepr-arn-sars-cov-2-highway
■アルゼンチン政府―ワクチン接種状況について:https://www.argentina.gob.ar/coronavirus/vacuna
■アルゼンチン政府―開放陸海空路リスト:https://www.argentina.gob.ar/interior/migraciones/cuales-son-los-corredores-seguros
■アルゼンチン政府―DECLARACION JURADA入力ページ(スペイン・英語版) https://ddjj.migraciones.gob.ar/app/home.php
■アルゼンチン政府―コロナ情報管理アプリ「Cuidar」ダウンロードページ:https://www.argentina.gob.ar/aplicaciones/coronavirus
■アルゼンチン移民局(入国情報等について)https://www.argentina.gob.ar/interior/migraciones/
■日本外務省―「たびレジ」サイト(各国の動向がメールで通知してもらえるサービス有り):https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg
■筆者ブログ―「主観的アルゼンチンブエノスアイレス事情」:http://blog.livedoor.jp/tomokoar/

筆者略歴

相川知子 広島出身 JICA海外開発青年として1991~4年にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスにある在亜日本語教育連合会(教連)で活動。その後、同国に定住し、スペイン語通訳、翻訳、教師、食品ロジスティックアドバイザー、テレビ撮影コーディネーター、ライター業などに従事。現在は「アルゼンチンをはじめラテンアメリカの人々の素顔を日本に紹介をすること」をライフワークとし、自身の運営するブログ『主観的アルゼンチン・ブエノスアイレス事情ブログ』(http://blog.livedoor.jp/tomokoar/)にて情報発信を行っている。

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