
連邦政府は先月末、11月10日〜21日にパラー州ベレンで開催される第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)の公式マスコットに、アマゾン先住民族の民話に登場する森林と動物の守護霊「クルピラ」を正式に採用した。アマゾンの文化的象徴を通じて、気候変動と森林保全の重要性を国際社会に訴える狙いがある。一方で、この決定を巡り、環境保護政策に批判的な連邦議員とパラー州知事との間で論争が起きていると3日付オ・グローボなど(1)(2)(3)が報じた。
議論の発端は2日、右派の連邦下議で、ボルソナロ前政権下で推進された環境規制の緩和政策や、先住民居住地での鉱業開発促進に賛同してきたニコラス・フェレイラ下議(自由党・PL)がSNSに投稿した批判にある。同下議はクルピラの特徴を揶揄し、「後ろ向きに歩いて炎に包まれるような存在を国際会議のマスコットにするとは、ブラジルと我々の森林を象徴するのに素晴らしい選定だ」と皮肉った。この発言は3万6千件を超える「いいね」を集めた。
これに対し、パラー州知事のエルデル・バルバリョ氏(民主運動・MDB)は翌3日、「クルピラは我々の守護霊であり、環境や森林に対する国際的議論において、ブラジルとパラー州が主役となることを示す象徴だ」とSNSで反論。「我が国の文化と民俗を認めようとせず、後退しようとする一部の人たちがいる一方で、我々は確実に前進している。世界中の注目をブラジルとパラー州へと向けさせ、森林とそこに暮らす人々を守るための取り組みの最前線に立っている」と強調した。
クルピラはペルー、パラグアイ、ベネズエラなど、トゥピ・グアラニー語族圏に広く伝わる民話に由来する。火を象徴する赤い髪と、逆向きについた足を持ち、その足跡で侵入者たちを惑わせ、アマゾンの森を保護しているとされている。伝説では、クルピラは「生ける火(fogo-vivo)」に姿を変え、狩人や外敵を追い払う霊的な力を備えていると信じられている。
今回のマスコット起用は、ブラジルが議長国を務めるCOP30において、森林を中心的議題とする姿勢を象徴するものだ。COP30の議長を務めるアンドレ・コレア・ド・ラゴ大使は、国際社会に向けた書簡の中で、「森林は本会議の中心的テーマであり、アマゾンの生物多様性と文化を象徴する存在に可視性を与えることが重要だ」と述べている。