
不倫発覚による離婚と財産分与を免れるため、夫が実母と共謀し、妻に少しずつ毒を盛った――サンパウロ州内陸部リベイロン・プレット市で3日、医師である夫とその母親が、妻を計画的に殺害したとしてフェミサイド(女性に対する殺人)で起訴された。母親は慢性中毒に見せかけるため、約15日間かけて食事に「シュンビーニョ」という殺鼠剤を混入。夫が犯行を指示し、発覚を逃れるため、入念な証拠隠滅を図っていたとされる。この母親には別の家族の毒殺疑惑も浮上していると3日付G1など(1)(2)(3)が報じた。
被害者ラリッサ・ロドリゲスさん(37歳)は3月22日、夫婦の自宅アパートの浴室で遺体となって発見された。通報したのは夫ルイス・アントニオ・ガルニカ被告(38歳)。死後硬直が進んでおり、現場を清掃した形跡やや携帯電話のデータ消去が確認されたことで、警察は証拠隠滅を図ったと疑っている。押収時に備えて「警察からのデータ回避」に関する検索を行っていたことも明らかになっている。
サンパウロ州検察局によれば、犯行は夫ガルニカ被告が不倫発覚を機に計画し、母エリザベテ・アラバサ被告(67歳)が実行役を担ったとされる。
エリザベテ被告は殺鼠剤を入手し、ラリッサさんの食事に少量ずつ混ぜて徐々に衰弱させた。体調を気遣うふりをして何度も夫婦宅を訪れ、介抱を装って犯行に及んだ。死亡数日前、ラリッサさんが「夫との離婚について弁護士に相談する」と周囲に漏らしたことから、エリザベテ被告は焦りを強め、死亡前夜にもアパートを訪れて毒を盛った。これが致死量だった可能性が指摘されている。
一方、ガルニカ被告はその夜、愛人宅に滞在しており、これをアリバイ工作に利用。翌朝自宅に戻ってラリッサさんを発見し通報するも、救急隊が到着する前にすでに愛人に「妻が亡くなった」と連絡していたことも判明。被告は蘇生を試みたと供述しているが、その形跡は見られなかった。
死亡後、ラリッサさん名義の銀行口座が操作されていたことも確認されている。ガルニカ被告は愛人に金銭援助をしており、経済的に余裕がなかったという。エリザベテ被告には約32万レアル(約850万円)の借金があり、金銭目的の共謀が疑われている。
6月30日付G1(4)によれば、エリザベテ被告には2月に死亡した実娘の毒殺疑惑も浮上している。同じ殺鼠剤の成分が検出されたため、遺体の再検視が進められている。約5〜6年前には友人にも毒を盛った疑いがあり、その友人は一時入院したものの命は取り留めていた。
マルクス・トゥリオ・ニコリーノ検察官は「抵抗できない状況を周到に作り出し、物的・電子的証拠を隠滅しようとした冷酷かつ計画的な犯行」と断定、「極めて卑劣で利己的」だと非難した。
被疑者2人は5月6日に予防拘置が認められ、現在も勾留中。家族内で繰り返されたとされる毒殺の全容は、今後の公判で明らかになる見通しだ。